【ユーリ!!!】野球女と銀盤の王子2 (ページ35)

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さて、そろそろ勇利の出番だ。

　勇利の試合なのに何故か自分の心がはやる。

　落ち着きがない様子は勇利が緊張するからやめようと、ヴィクトルの方を見ると私の視線に気がついたヴィクトルと目が合う。

「どうしたの？」

「なんでもないよ。ヴィクトルのいつもの顔見ると安心した」

　笑って言うと、意味が通じてないヴィクトルに首を傾げられた。

　勇利が私たちの前に到着して、ジャージの上を脱いだので私がそれを受け取る。

「やっぱりいいねこの衣装。ユーリが一番美しく見える」

「当たり前でしょう？勇利とこの曲のためだけに作ったのに勇利に似合わない訳がないじゃない」

　似合ってるよ勇利。と言って彼の少し跳ねた髪を整えてやる。

　そして少し距離をとって勇利の全体を見る。

　顔が締まっているのも合間ってとても美しい。

　そんな私だがヴィクトルはとあることに気がついた。

「唇荒れてるね」

　ポケットに手を入れるヴィクトルだがアレ？と手を出しポケットを叩いている。

「コートのポケットじゃない？」

　ヴィクトルが使っていたのを見ていた私は指摘する。

「ああ、そうだった」

　コートのポケットから蓋が黒い容器を取り出し、中身を指ですくい勇利の唇に優しく付けて行く。

　そして容器に蓋をしてコートに仕舞い彼とハグを交わす。

　ヴィクトルとのハグが終わった彼に私は両手を広げて彼からハグをしてくれるのを待つと彼からハグをしてくれた。

　すぐに離れた勇利は私に日本語で話しかけてくれる。

「Aのいつも使ってるいい香りのするハンドクリーム持ってる？」

「持ってるよ。付けてあげようか？」

　するとコクリと首が肯定の意をして落ちる

　私は自分の手にハンドクリームを落とし、手で温めて彼の手に塗り込んで行く。

「Aの手、冷たいね」

「冷え性だからかな？ ……よし、塗り終えたよ。頑張ってね」

　手を離せば勇利が両手を嗅ぐ仕草をしながらリンクに出て行った。

　見送る私達は彼の背を見ながら会話をする。

「勇利に何してたの？」

「ハンドクリーム塗ってたの。……塗る？」

「塗る」

　そう言われたのでハンドクリームの容器を渡した。

「えー勇利には塗ってあげたのに俺には塗ってくれないの？」

「……えらく大きな年齢の甘えたちゃんだなぁ」

　私は受け取って貰えなかったハンドクリームを手に出して温めてからヴィクトルの手に塗る。

「三人同じ香りだね」

　なんてヴィクトルは言っていた。