【ユーリ!!!】野球女と銀盤の王子2 (ページ34)

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任せろと言われたので了解したのは良いが本当に何をする気だろう。

　私の予想していないことをしでかしたら、どう対応すれば良いんだろう。

　そうこうして帰ってきた勇利を私は深刻な顔で見つめる。

　そこでリンクサイドの塀で頬杖をついているヴィクトルは低い声で勇利に声をかける。

　そこで顔を向ける勇利に彼は言う。

「他人のモチベーションを上げられない人間が自分のモチベーションを上げられるのかい？」

　まぁ、そうだよな。黙ってヴィクトルの横に立ち話を聞いていると、ヴィクトルがカチャンとエッジカバーをリンクサイドに起き立ち去る。

　えっ、ええー……思ったより厳しい対応……

　それに呆気を取られているとヴィクトルが私の手を掴んで言う。

「Aも行くよ」

「あっ、うん……」

　返事をする前にグイグイと手を引っ張られて連れて勇利からは距離のあるベンチ側にまで行く。

「お、思ったより厳しいんだね……」

　驚き半分で感想をヴィクトルに言う。

「Aは勇利に甘いから俺が言わないとね」

　それほど甘く対応している訳ではないのだけれど……

「……まぁ、善処します」

「いやAはそのままで良いよ」

　じゃあその指摘をどう受け止めろと言うのだ。

「俺が厳しくしすぎたら勇利も心が折れるからAは甘くて良いんだ」

「……ヴィクトルも普段は勇利に甘いと思うよー」

「えー厳しいと思うんだけどー」

「いや、両方かな？」

　何それとヴィクトルに笑われると同時に南くんの演技が始まる。

　ベンチに座っているヴィクトルに対して私は立ってリンクを見る。

　そうしていると突然、勇利の大きい声がこだました。

「みなみくん！がんばー！」

　その声に一瞬驚いたが、それに私は思う。

　なんだ、言えるじゃん。

　私は肩をすくめて柔らかく息を出した。

　南くんの演技はチャーミングかつジャジーな曲と振り付けに飲まれついつい手拍子をしてしまう。

　演技途中にエアギターを披露するあたりフィギュアスケートはこういった演技もできるのかと演技の自由さの発見も楽しく思えた。

「A楽しそうだね」

　座っているヴィクトルに自分の顔を見られていたのね。

「うん！楽しいよ！やっぱり野球もそうなんだけど応援するのって本当楽しい！」

　球場では鳴り物や大きな声を出すのでフィギュアとは応援スタイルが違うのだが、こう頑張っている人を見るのはやはり良いものだ。私は改めてそう感じた。