【ユーリ!!!】野球女と銀盤の王子2 (ページ33)

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宣戦布告された翌日、勇利が館内ベンチでシューズ紐を結んでいるところに私は話しかける。

「勇利、言い忘れてたけどファンサービスは忘れないようにね。大切だから。」

　Aはファンサービスするような立場に立っていないから良い身分だと思われていたら最悪だけれど。

　一応昨日新聞記者へインタビューに答えたし、反論する盾は持っている。

　反論しても良いぞと思っていたが、勇利はどこか上の空で私の話しを聞いている様子はなかった。

「勇利ぃ？ゆーうーりぃ？聞いてるの？」

　少し腹が立ったが選手には私情を入れて怒らない、何があっても守ると決めているので、怒るのは良くないと自分を律し、勇利に向き合う。

　何度目か勇利を呼べは彼の気がこちらに帰って来たので再び同じことを言う。

「とにかく、ファンサービス忘れちゃダメだからね！」

　くどくど言うと本番前に嫌な気分になるだろうと説教もほどほどにしていたらヴィクトルが来た。

「勇利、そろそろ中に入ろう」

　そう呼ばれたので私たちは揃って移動する事にした。

　リンクサイドを歩いている途中に南くんが話しかけたが勇利は余裕のなさなのか、緊張なのか彼を無視して横切った。

　私の話、全く聞いてないじゃん。

　溜め息を吐きたくなったがグッと息を肺に押し込めて難しい顔をする。

　横を見るとヴィクトルも難しい顔をしていた。

　勇利がウォームアップ中に説教の仕方を間違えたのか、私が言っても意味がないのかなど自分の対応について疑心暗鬼になってくる。

　せっかく作った衣装を纏った勇利を本番でやっと見れるってのに、考えすぎて溜め込んでいた溜め息が大きく出た。

「A大丈夫かい？」

　そんな私の大きな溜め息にヴィクトルが気を使ってくれる。

「う、うん……緊張しちゃって」

　あまりヴィクトルには心配かけさせないでおこう。

　緊張という言葉で全てをうやむやにした私を見透かす様にヴィクトルは言う。

「勇利のことでしょ。対応が気になる？」

　バレてる～！

「まぁね。相手がファンだろうが選手だろうが友人だろうが、あの対応は良くないよねー」

　自分の心情が筒抜けなのがこっぱずかしくなり軽い言い回しをする。

「大丈夫。俺に任せてくれれば」

　何を任せたら良いのか分からないが、とりあえず分かったとヴィクトルに言った。