【ユーリ!!!】野球女と銀盤の王子2 (ページ25)

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ヴィクトルを試着室に押し込めている間にとあるモノが目に付く。

「あ、すみませんこの手袋サイズ感とかどんな感じですか？」

　絶対あの服にこの革手袋似合うし、どうせならめちゃくちゃカッコいいヴィクトルを見てみたい。

　私は説明をきいて購入を決め、クレジットカードを店員に渡した。

「ね？ Aどう？」

　サインを書いていたら奥からヴィクトルが声をかける。

　フィッティングルームから少し出る彼を見る。

「むちゃくちゃカッコいよ！」

　脚が既に長いのに長く見えるような形のパンツにシックなジャケット、大人の男性って感じだろうか。

「最初、黒のスリーピースなんて気合入り過ぎって思ってたけどやっぱり気合い入ってた服装の方がかっこいいわ」

「本当かい？まぁ、Aはちゃんと意見してくれるから信用してるよ。店員さんこれにするよ」

　自分を担当してくれていた店員にそう告げてスーツを脱ぎに試着室へ戻る。

　その入れ替わりで私が購入したものを持ってきてくれた。

　普通なら店先まで荷物を持ってきてくれるが秘密にしてくれるのを察してくれたのだろうこの場で品物を渡してくれる。

　百貨店の洗礼された接客に感動しながら、忙しい客で申し訳ないとも思った。

　少しして着替えて出てきたヴィクトルは店員にスーツを渡し会計をする。

　ヴィクトルは店先で荷物を渡してくれる店員にカタコトの日本語で「ありがとう」と言い、私も帰り際に感謝の念を述べた。

「いい買い物したねー！……って、あれヴィクトル？」

　先ほどまで横並びだったのに忽然とヴィクトルの姿が消えた。

　あの自由人め、どこでも迷子になるんだなと思い、彼の携帯に電話をかけるとすぐに出た。

「ちょっとーヴィクトルー？どこいるの？」

「後ろにいるけど」

　振り返ると真後ろにヴィクトルが立っている。

「わぁ！近いな！」

　私はやれやれとスマホをカバンに片付けている時に気が付いた。

「その手に持ってるの何？」

　ヴィクトルの手には自分の真横にある店のブランド名が書かれた紙袋。

「ああ、これ？コートだよ」

　かっこいいの見つけたと嬉しそうにその紙袋を上げて見せてくれる。

「ええ？もっと見比べなかったの？」

「俺はこれがいいと思った！」

「……ああ、そう。」

　自分との服選びの感覚に違いがあり過ぎて困惑するしかなかった。