【ユーリ!!!】野球女と銀盤の王子2 (ページ24)

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お昼前、私とヴィクトルは玄関前に集合している。

「Aー後ろ乗ってー！」

　いつものように自転車に乗ったヴィクトルは私を後ろに乗るよう促す。

「はーい乗ったよー！」

　そう言うとぐわんと大きく自転車が前に動き始めた。

「そういえば衣装完成したんだったね」

　おめでとうと妙な祝われ方をする。

「あはは、ありがとう。勇利には出世払いで衣装代支払って貰わないとね」

　二人して声をあげて笑いながら雑談しているといつの間にか駅のホームにいて、電車に乗り、繁華街にある百貨店に向かっていた。

「ヴィクトルはどんな服とか決めてるの？」

　エレベーターに乗りながら紳士服のコーナーに足を進めて行く。

「うーん決めてない！」

　そういうのはフィーリングで決めるとハートの口で笑ってみせる彼に、ヴィクトルはそれで生きていけるから羨ましいと思った。

「あ、これにする」

　紳士服の階に着いてフラッと目に付いた店の前にいるマネキンを指差す。

　マネキン買い！私はマネキン買いしようとするヴィクトルに驚く。

「え？本当にそれでいいの？確かにカッコいいけど着て見ないとカタチ分からないし、取り敢えず試着してから決めよう？」

　服で失敗しない買い物は試着すること。
　取り敢えず、店の中に入って店員に頼んで試着をお願いする。

　スリーピースの黒色スーツって気合入り過ぎなんじゃないかと個人的に思うのだけれど、どうなのだろう。

　試着室の周りの商品を見ながら彼が出て来るのを待つ。

「Aどうかな？」

　勢いよく試着室のカーテンが開けられるとスーツを着た彼が現れる。

「えー！めっちゃカッコいい～！」

　ついつい女子高生のような反応をしてしまう。

「あ、でもそれならシャツはこれがいい」

　ヴィクトルが試着しているまでに見ていた商品を指差して言う。

　店員さんに頼んでシャツを出してもらい、ついでにネクタイも黒のものに変えてもらう。

「これじゃAの着せ替え人形だね」

「勇利ならヴィクトルがジャージで大会来ようが良いかも知れないけど、カッコいいヴィクトルだからこそ最も似合うカッコいい服を着て欲しいしいじゃん！」

　ダサいコーチよりカッコいいコーチの方がいいでしょう？と言って私はヴィクトルを再び試着室に押し込めた。