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夜中、いろいろ試行錯誤して何種類かの衣装案ができた。
フィギュアスケートの男性衣装は女性のようにスカートで動きを演出することができない分、上に重きを置かなければならない。
雑誌や衣装の本を読み、ウェブで検索をしたりさながら論文を書く大学生のようである。
とりあえず勇利の言っていた曲のイメージに沿うよう意識して用意してみた。
早速彼に見せに行こうと自室を出て左手に曲がった扉をノックする。
「勇利ーまだ起きてる？」
完成した衣装をはやく見せたくて夜なのにも関わらず来てしまった。
寝ていたら出直そうと思ったが部屋の扉が開く。
「あ、ごめんね寝てた？」
そういうとネットサーフィンしていたと答えが出て来たので安心する。
「衣装のことで少しみて欲しいんだけど」
私は自分の部屋に案内する。
「基本的な形はジャケットにVネックで大人っぽさを出してくカタチにしようと思うんだけど、衣装の色と柄、細かいとこまでまだキチンと決まっていなくて……」
テーブルの上に置いた案をそれぞれ説明してゆく。
ソファーに座り過去に私が買ったメンズファッション誌を見ていたヴィクトルは本を閉じてテーブルの方に目をやる。
こういうのはフィーリングで決める人も少なからずいるが、勇利はどういう風に衣装を選択するのだろう。
「じゃあこれがいい」
指をさした案はジャケットの上からコルセットに見えるようなデザインの衣装だ。
これは自身でも結構気に入っているものだ。
「あ、でも色はもっと暗めがいいかも」
「でも暗くしちゃうとあまり衣装映えしないような気がするんだけど……」
フィギュアスケートのことを調べると衣装にも重要さが伴っていることが分かった。
なので選手の言うことにハイそうですかといって妥協して言いなりにはなれない。
「じゃあ飾りを大胆に装飾してみるか……」
勇利が指差した紙の裏にメモを書き足してゆくとヴィクトルがクスクス笑う。
なんだなんだと二人して彼を見れば言う。
「普段は勇利に甘いAなのに今は厳しい顔をしてるの見てて面白くなって」
「えっ、そんな顔してた？！」
私は眉間を擦りながら勇利に問うと「してたしてた」と笑って言う。
「ええーでも、ヴィクトルもちゃんとコーチしてる時は目が厳しいよー」
お互いの分野にはキチンとプライドを持っているんだ。妥協なんてできない。
私は眉間を擦りながら勇利に話を続ける事にした。
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作者名：かなぁ | 作成日時：2016年11月25日 14時
