【ユーリ!!!】短編集 (ページ7)

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メンタルページ7

練習時間の休憩中、勇利にとあることを聞かれた。

「Aってテニスやってたんだよね？」

「テニスと水泳もやってたよ」

　スポーツの話をしたい訳ではなさそうな重たい声で聞いてくる。

「試合前って緊張してた？」

　何を聞いてくるかと思えば……

「するに決まってんじゃん！」

　勇利は私のどこを見て緊張しない人間だと思っているのか。

「多分だけど、ヴィクトルも緊張ってすると思うんだよね」

　勇利はそうかなーと一人リンク場で滑っているヴィクトルを見ている。

「ただ、緊張してるからって思考が試合に出たくないとか辞めたいとか、そういうネガティヴな感情にはならないかな。その緊張感が良いというか、高揚感がイイというか」

　私と勇利は思考が違う。
　だからこんな言葉でアドバイスしたって結局は勇利が変わらない限り、私と自分は違うんだと境界線を引いてしまって終わりなんだろう。

「緊張ってのはある程度必要な事だと思うんだよね。気が張ってると集中できるし」

「…….分かってるんだけど～」

　どうしてそんなに緊張することを彼は嫌がるのかと考えているとある事に結論付いた。

「あ、分かった～！勇利、緊張するその感覚が嫌いなんでしょう」

　平常とは違う心境になると息は上がるし、心臓は高鳴るし、しんどくてツラくて仕方ない。

　その異常な感覚があるからジャンプは失敗するし演技はボロボロになるんだと頭がそう結び付けてしまっているんだろう。

「あーそれはあるかも」

　勇利は決して弱くない。
　本番前に弱気になることはあるかもしれないが、それが弱いというのとは関係はない。

　どこかで自分を信じられる自分になりたいんだと思う。

　だから、同じ気持ちを共有できる人を探してそこから気持ちを変えて行こうとしているんだろう。

　たまたま今回それが私だっただけだ。

　でもごめんね、理解することはできても勇利と私は違うんだ。

「原因が分かったんならその緊張を緩和することが出来るんじゃない？緊張で胸が痛いなら笑うとかさ」

　勇利の脇腹を指で軽くくすぐる。

「えっ、ちょ、やめてよー！」

「ほら、笑うと気持ちが違うところに行って重い気持ちもどこかに行くんだって」

　試合前に毎回ヴィクトルに脇腹くすぐってもらったら良い成績出るかもねとアドバイスすると、勇利は笑って別の方法探すから！と言われた。