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困った人ですねの巻 ページ36

「え、姉さん?」

『うん、会いにきた』


誠士郎が小走りで駆け寄って来てくれて手を握ってくれた。
冷たくなった手に誠士郎の体温がじんわりと滲んでいく。


「手冷たくなってる。
...父さんと母さんに言ってきたの?」

『言ってないよ。』

「ダメじゃん、帰りなよ。」

『誠士郎、私たち別れよう』


私の言葉を聞いた誠士郎が、眉を顰めた。
そしてすぐ口を開く。


「嫌だよ。なんでそんなこと言うの?」

『あのね私、ずっと誠士郎とパパとママに甘えてた。
人から言われたことに流されて生きてきたの』

「俺と付き合ったのも流されたからだって言いたいの?」

『違う。私、何にも持ってないことに気づいたの。
自分で道を切り開こうとしてこなかった。
人が敷いたレールで生きて自分はいい子だと思ってた。』


誠士郎の手を握り返す。
そうして顔を上げて、私は誠士郎の瞳を見つめた。


『私、誠士郎に与えられる人間になりたい。
誰にも文句言わせないくらい、強くなりたい。
今の私のままじゃだめなの。

だから今度は、私が悪者になって
誠士郎のこと迎えに行く。絶対迎えに行く。

だから、...ふっ、ぅ、だから
ちょっとの間だけ、まってて...』


目の前が歪んで、誠士郎の顔が見えなくなった。
私の言葉を聞いた誠士郎がぎゅ、と私を胸の中に収める。
あたりはだいぶ暗くなっていた。


「泣いたら台無しじゃん」

『だってぇ...』

「けど、姉さんの気持ちは分かったよ。
待つのは慣れてるから。

姉さん、愛してるよ。
俺の気持ちは変わらない。

だから、姉さんがやりたいことをやればいいよ。
俺はそれがどんな結果だとしても応援するから」


ぐい、と私の腕を引いた彼は寮の鍵を開けた。


『?せい...』

「どうせ帰んないでしょ。
今日は寝かせてあげられないけど、
今日くらい俺のわがまま聞いてよ、姉さん。」



ーー...



『はっ、はぁ、はっ...誠士郎のバカッ!!』

「まだ足りないんだけど」

『身体壊れる!』

「もうだいぶ馴染んでるじゃん」

『誠士郎ぉ?』

「はいはいすいませんでした」


同じベッドに項垂れて、私は痛むお腹を押さえた。
お腹というかなんかもっと奥が痛い。
毎回毎回こんな凶器じみたもの挿れられる私の気持ちにもなってほしい。


『本当に困った人なんだから』

「あ、それ」

『?』

「中学の時も姉さんに言われた。」


私は首を捻った。
私を後ろから抱きしめた誠士郎はぽつぽつと
こんな昔話を話し始めた。

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設定タグ:ブルーロック , 凪誠士郎 , 青い監獄   
作品ジャンル:恋愛
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きゅんた(プロフ) - 玉子ぷりんさん» 初期から読んでいただいてありがとうございました♡ヒロインも誠士郎くんもきっと玉子ぷりんさんに感謝していると思います(^^)♡色々な作品書いているのでぜひ読んでみてください(^^)♡応援ありがとうございます! (6月4日 19時) (レス) id: 7cf9bc3205 (このIDを非表示/違反報告)
玉子ぷりん - 完結おめでとうございます!久しぶりに占ツクにきたら完結していて、寂しかったけどハッピーエンドで嬉しかったです!凪(誠士郎くん)がもっと好きになりました!次回作も楽しみです!これからも応援してます! (6月3日 22時) (レス) @page43 id: 07e67c9327 (このIDを非表示/違反報告)
きゅんた(プロフ) - 甘野さん» 誠士郎くんグイグイですよね(^^)♡応援ありがとうございます〜更新頑張ります!♡ (5月9日 10時) (レス) id: 7cf9bc3205 (このIDを非表示/違反報告)
甘野(プロフ) - 更新有難うございます ..!設定が神すぎてずっとにやにやしながら見ちゃってます(笑)それにしても凪くん(誠士郎くん?笑)グイグイ来てて凄いどきどきしてます〜♡素敵な作品をありがとうございます!これからも応援してます🎶作者様のペースで頑張って下さい! (2023年5月6日 17時) (レス) @page9 id: b338b8448c (このIDを非表示/違反報告)
きゅんた(プロフ) - 玉子ぷりんさん» 凪くんならこれだなって妄想が膨らんじゃいました...! (2023年5月4日 2時) (レス) id: 7cf9bc3205 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きゅんた | 作成日時:2023年4月29日 20時

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