私のやるべきことの巻 ページ35
けれど、これ以上は手を出す気力は湧かなかった。
なぜなら彼の言っていることはもっともだからだ。
ただ、怖いのだ。
もう既にいい子じゃない癖にまだいい子でいようと抗っている。このまま、もしかしたら誠士郎のことを忘れられるかもしれない、とまた自分のことしか考えていない。
「...凪さんさぁ、
家庭環境とかで自己保身してしまう癖とか、まあ仕方ねぇと思うよ。
だけどさ、自分が傷つきたくないからって他人にベクトル向けて他人傷つけることで自分の心保ってるようじゃ、
人間そこから壊れていくとおもうけど」
『...真っ当な人間じゃなくなった私の価値ってどこにあるんでしょう』
彼の胸ぐらから手を離して、
だらんと腕を下げた私は力のない声でそう言う。
後頭部で手を組んだ内永さんが私を見下ろすとんー、と唸る。
「そんなん知るか」
『なっ、ここまで煽ったんです!責任とってください』
「はいまた他人軸〜、マジ癖だねそれ。
つかさ、価値って相対評価なんだよ。他人が凪さんの価値を判断するんだから、自分で見つけようとしても無理無理」
『他人にベクトル向けるなって言ってみたり、
他人に価値を委ねろって言ってみたり...なんなんですか』
「うんけどこれ真理なんだよね。
だから、凪さんは与えられたものをしっかり見なきゃなんねぇと思うよ。もう、沢山貰ってるでしょ。価値。
凪さんが心を閉ざすから気づけなくて、
他人にばっかり貰おうとすんだよ。
少なくともあの弟くんは、ずっと凪さんに与えてたと思うけどね」
今度は凪さんの番じゃねぇの?と
内永さんはそう言った。
誠士郎が私に与えてくれたものーー...
『なんか、わかった気がします』
「そう?じゃ、俺の可愛い彼女の写真見る?」
『じゃあ私は失礼します』
内永さんを無視して歩みを進める。
後ろから内永さんが「そっち学校じゃねえよ」と言うので
振り返ってこう言ってやった。
『やるべき事をやって来ます!』
◆
白宝高校の徒歩圏内、学生寮の前に私はいた。
誠士郎くんは私と姉弟になるまではここにいたんだ。
はー、と白くなる息を吐いた。
会いたい。
早く会いたい。
日が暮れていく。時間の針はどれぐらい進んだのだろう。
地面を向いて帰宅する白宝生を数人眺めていると
向こう側から白い髪の毛を揺らしながら歩いてくる人影が見えた。
『誠士郎!』
私の声に携帯から顔を上げた誠士郎がびっくりしたようにその丸い目をさらに丸くしていた。
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きゅんた(プロフ) - 玉子ぷりんさん» 初期から読んでいただいてありがとうございました♡ヒロインも誠士郎くんもきっと玉子ぷりんさんに感謝していると思います(^^)♡色々な作品書いているのでぜひ読んでみてください(^^)♡応援ありがとうございます! (6月4日 19時) (レス) id: 7cf9bc3205 (このIDを非表示/違反報告)
玉子ぷりん - 完結おめでとうございます!久しぶりに占ツクにきたら完結していて、寂しかったけどハッピーエンドで嬉しかったです!凪(誠士郎くん)がもっと好きになりました!次回作も楽しみです!これからも応援してます! (6月3日 22時) (レス) @page43 id: 07e67c9327 (このIDを非表示/違反報告)
きゅんた(プロフ) - 甘野さん» 誠士郎くんグイグイですよね(^^)♡応援ありがとうございます〜更新頑張ります!♡ (5月9日 10時) (レス) id: 7cf9bc3205 (このIDを非表示/違反報告)
甘野(プロフ) - 更新有難うございます ..!設定が神すぎてずっとにやにやしながら見ちゃってます(笑)それにしても凪くん(誠士郎くん?笑)グイグイ来てて凄いどきどきしてます〜♡素敵な作品をありがとうございます!これからも応援してます🎶作者様のペースで頑張って下さい! (2023年5月6日 17時) (レス) @page9 id: b338b8448c (このIDを非表示/違反報告)
きゅんた(プロフ) - 玉子ぷりんさん» 凪くんならこれだなって妄想が膨らんじゃいました...! (2023年5月4日 2時) (レス) id: 7cf9bc3205 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きゅんた | 作成日時:2023年4月29日 20時