凪誠士郎が義弟になりました。【凪誠士郎】

愛が足りませんの巻 ページ27

サッカーをしている誠士郎くんをみたかったので
このお誘いに胸を躍らせていたら前から内永さんの姿。


『内永さん！いまから誠士郎くんたちの部活見に行くんですけどよかったら一緒...に...』


にっこりと上品に笑ったかと思うと、
急に手を引かれてそこら辺の空いていた教室に押し込められた。あれ、


「凪さん、すいません。
俺、そろそろ待てなくなっちゃいました」

『えっと』

「忘れたんですか？俺、凪さんが好きなんです。
告白の返事、今聞かせてもらってもいいですか？」


ぎゅう、と無遠慮に握られた手首が痛い。
笑っているのに笑っていない顔が怖かった。
内永さんが、怖い。


『あ、えっとそうですよね。
あの、お気持ちは嬉しいんですけど私好きな人がーー
「あはは、知ってます。弟くんですよね。」...ぇ』


ひゅっと喉が詰まる感覚。
内永さんは楽しそうにスマホをいじって画面をこちらに見せてきた。


「ま、別にこんな写真なくても裏とれてんだけど、
今日はいいの撮れちゃったからさ。

これ、キスしてんの凪さんと弟くんでしょ？」


見せられた写真は、今日の昼の屋上でのものだ。
どうしよう、鼓動が早くなっていく。

どうしようどうしようどうしよう


『それは誤解で』

「んな訳ねーじゃん。動画もあるし。あんな甘ったるい声出してさ、逆に見つけたのが俺でよかったね。
凪さん頭いいから分かるだろうけど
断ったりしたらこれ拡散するつもり。

どう？俺と付き合う気になった？」


画面を楽しそうに見つめる彼は本当に私の知っている
内永さんだろうか...


『卑怯ですよ、そんなことして付き合えたとして
あなたは幸せなんですか？』

「え？うん。凪さん美人だし普通に自慢できるじゃん。
前から可愛い子いるなーって目付けてたんだよね。」

『お断りします。』

「え？」

『付き合えません』


彼をキッと睨んで私は手を振り払った。


「いやいやいや、君断れる立場じゃないでしょ」

『愛が足りません。』


私の言葉にきょとんとした内永さんが
は？とその瞳を澱ませた。負けるもんか。


「俺めっちゃ愛重いよ。つか凪さんの生活全部監視してるみたいなもんだし。何を食べて何を話してどこに行ったかも
全部わかってるつもり」

『そういうことじゃありません。
内永さんは私と、不幸になる覚悟はありますか？』

「あるよ！」

『そうですか』

私はカバンの中からカッターを取り出すと
チキチキと刃を出した。

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