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貴方が好きの巻 ページ22

項垂れた私は必死に涙を止めることで精一杯だった。


『汚い考えばっかりで、保身ばっかりで
あなたを遠ざけてごめんなさい。

だからお願いです、今ならまだ忘れられます。
蓋をして何年か経てばきっと、傷ついたことすら
思い出になるんです。わたしの心を引っ掻き回すのは
もう、やめてください』


ぽろぽろ、と涙が溢れた。
こんな時にまで頭の中で考えるのはママの顔だった。
もう嫌だ、こんな自分。もういやだ。


一通り言い終わった後に激しく後悔した。
見られた、私の心の中。もうだめだ。
そう思った時だった。


「じゃあ俺が姉さんのために、悪者になるよ」


ぎゅ、と私の手を握っていた誠士郎くんの手から
力が伝わってくる。太ももに涙が伝って、
生暖かい感覚だけがやけにリアルだった。


『信じられません。もしダメだったときーー「ダメだった時は来ないよ」』

「俺はもう一生、姉さんを逃してあげられない。
それで姉さんを苦しめたとしても、姉さんを泣かせても
きっとそれでも諦めてあげることはできないから。

どのみち苦しませてしまうなら、俺が一緒に堕ちるよ。」


この言葉は呪いだ。
こんなにひどく私を痛めつけるのに、

こんなに、

こんなに私が望んだ言葉もこれ以上にない。


誠士郎くんは自分の唇の私の唇を重ねる。
好き、好き。

私、この人が好き。

私はこの先この恋を昇華する術を持たないだろう。
それでも


『一緒に...堕ちてくれる?』

「いいよ」


悪い娘でごめんなさい。
出来が悪くてごめんなさい。
誠士郎くんを、こちらに引き摺り込んでしまった業を
私は今日この瞬間から背負うことになる。
それがどんな意味を持つのかは、幼い私たちは
まだ分からなかった。






『いってきます』

「いってらっしゃい〜、今日からよね?合同研修」


支度を整えて玄関に向かう途中母がそう声をかけてきた。


「誠士郎と3日間、同級生なんだな」


凪さんも今日は家に居て、何だか居心地の悪くなった家を
飛び出したい衝動に駆られる。これは罪悪感だ。


「姉さん、俺も一緒にいく」


奥からゆっくり歩いてきた誠士郎くんがそう言った。


「誠ちゃん、うちの娘よろしくね」

「うん」

『じゃ、じゃあもう行くね』


玄関を開けると、パッと明るく手を振る内永さんの姿。


「凪さん!...と弟くんも!そっかぁ、通学同じだし
今日からよろしくね」


失念していた。
今日は内永さん断るべきだった。
というか、これからは断らなければならない。

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設定タグ:ブルーロック , 凪誠士郎 , 青い監獄   
作品ジャンル:恋愛
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きゅんた(プロフ) - 玉子ぷりんさん» 初期から読んでいただいてありがとうございました♡ヒロインも誠士郎くんもきっと玉子ぷりんさんに感謝していると思います(^^)♡色々な作品書いているのでぜひ読んでみてください(^^)♡応援ありがとうございます! (6月4日 19時) (レス) id: 7cf9bc3205 (このIDを非表示/違反報告)
玉子ぷりん - 完結おめでとうございます!久しぶりに占ツクにきたら完結していて、寂しかったけどハッピーエンドで嬉しかったです!凪(誠士郎くん)がもっと好きになりました!次回作も楽しみです!これからも応援してます! (6月3日 22時) (レス) @page43 id: 07e67c9327 (このIDを非表示/違反報告)
きゅんた(プロフ) - 甘野さん» 誠士郎くんグイグイですよね(^^)♡応援ありがとうございます〜更新頑張ります!♡ (5月9日 10時) (レス) id: 7cf9bc3205 (このIDを非表示/違反報告)
甘野(プロフ) - 更新有難うございます ..!設定が神すぎてずっとにやにやしながら見ちゃってます(笑)それにしても凪くん(誠士郎くん?笑)グイグイ来てて凄いどきどきしてます〜♡素敵な作品をありがとうございます!これからも応援してます🎶作者様のペースで頑張って下さい! (2023年5月6日 17時) (レス) @page9 id: b338b8448c (このIDを非表示/違反報告)
きゅんた(プロフ) - 玉子ぷりんさん» 凪くんならこれだなって妄想が膨らんじゃいました...! (2023年5月4日 2時) (レス) id: 7cf9bc3205 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きゅんた | 作成日時:2023年4月29日 20時

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