凪誠士郎が義弟になりました。【凪誠士郎】

中学の頃の話の巻 ページ17

中学までは結構明るくて活発だったと思う。
クラス委員長してたし背は低かったけどバスケ部に所属して...友達もいたし勉強は得意な方だった。
どっからだっけな...私が他人と線を引くようになったの。


『ただいまー』

「おーおかえり」


中学から帰ると、リビングでパン1でテレビを観ている父。
日々ダラダラと惰眠を貪る。

父は働くのが嫌いな人だった。
学がなかったけれど母方の祖父母が経営している会社に入って何年かは働いていたけれど、気を遣うのがいやになって
会社を辞めたらしい。


『パパ...』

「おーA、悪いんだけどさ小遣いあるか？
1000円でいい。倍にして返すからさ。」


倍にして返すから、は父の口癖だ。
パチンコ依存症。小さい頃からこれが普通で、
たまに勝った日は機嫌のいい父が本当に何倍にもして
返してくれることもあった。


『パパ、悪いけど私パパにお金貸さないよ』


そういうと、父は不機嫌になる。
私は悪くないのに私が非難される。

財布を隠すことが多くなった。
けれど父は私の部屋に入っては財布を見つけるのが上手かった。

どんなところに隠していたって
気がついた頃にはお金は抜かれていた。

それを母には話せなくて、
私は幼いながらに小さな我慢と自分にも他人にも嘘をつくのが上手くなった。


『(私が我慢すればいい)』


何度も何度も離婚してくれと勇気を出して懇願したけれど
ママは決まって「あなたのためにもパパがいたほうがいいでしょう」と、取り合ってくれなかった。


私のためという言葉を隠れ蓑にした精神的な暴力だとおもった。


父も母も、頭の悪い人だった。


『私が、しっかりしなきゃ。私が。』


とにかく将来いいところに就職してお金が必要だ。
だから勉強した。特段天才気質でもなかったけど、
やればそこそこはできた。
結婚も恋愛も必要がないなと思った。
だって、どうせ辿る先がこんな伴侶との生活なら、
最初から無い方がいくらか自分が傷つかなくて済むから。


「女の子はそんなに勉強できなくても
いい人と出会って結婚すればいいのよ。女は愛嬌よ。」


そんなことを言ってくる祖母も、
甲斐性はあるが高圧的な祖父の言いなりだ。

どうして消費されるばかりの生活を選ぶのだろう。

私は、私だけは
選ぶ側の人間でありたい。

他人に邪魔される人生なんて、私は嫌だった。

だからどうか私に興味を持たないでほしい。
深く踏み込まれた時にこんな汚い感情を、
誰かに知られたくは無いから。

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