Eternal Snow (ページ5)

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がたんごとん (abkjsk) ページ5

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自閉症の橙 × 兄の緑 × 友人の桃
( Ryohei side )

" もしもし、こちら阿部さんの携帯でしょうか？"

仕事帰り、身に覚えのない番号から電話がかかってきた。

あ、でもこの特徴的な声、なんか知ってる。

「 …… 佐久間？」

聴き慣れた声を持つその相手は、
高校時代のクラスメイト。

" あ、えっ、……阿部ちゃん？！
… じゃあ「康二」って阿部ちゃんの弟？！"

驚いている佐久間の声の裏側に聞こえるのは、
人が泣き叫ぶ声。

きっと佐久間は、康二のリュックについているヘルプマークを見て連絡をくれたんだと思う。

弟の康二は自閉症。

平日は毎日作業所に通っている。

予定通りにいかない日や調子の悪い時はパニックを起こしてしまう。

だからいつ何があってもいいように、リュックには俺の連絡先を書いたヘルプマークがついている。

「佐久間、連絡ありがとう。いま、どんな状況か教えてもらってもいい？」

康二の予定では今、作業所を出て、家に帰るための電車の中にいるはず。

" あっ、えっとね、…… "

どうやら、電車に何かトラブルがあって緊急停止してしまったらしい。15分はこの状態が続いていると。

状況が理解できない康二がパニックを起こして暴れているところを、帰宅途中の佐久間が救ってくれようとしてくれた。

「康二はどんな様子？」

" それでね、今、手すりに頭ぶつけてて、やめさせようとしてるんだけど、ダメでさ…… "

こうして助けようと思って差し伸べてくれる優しい手は、人に触れられることが苦手な康二にとっては逆効果。

______ うっ、ぎゃーーっ、うわああっ、ぎゃー

電話の向こう側で、激しい泣き声が聞こえる。

直ぐに迎えに行きたいけれど、
電車が止まっているからどうにもならない。

今頼れるのは、電話の向こう側にいる佐久間だけ。

「佐久間、康二のリュック開けてもらっていい？
ヘッドホンを耳につけてほしくて。

…… あと佐久間上着着てる？着てたら脱いで、
覆い被せるようにしてほしいんだよね。

暗くて静かな場所が安心するみたいだから。」

早口になりながらも、指示をする。

焦ってもしょうがないと自分に言い聞かせながら。

" うん、わかった！"

「ほんとに助かる、ごめんね。」

それでも康二はきっと、最寄り駅まで電車に乗り続ける。
だから佐久間にお願いして、そこまで着いていってもらうことに。

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