シェアハウスの管理人【雪】 (ページ13)

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「目黒見て、満月！」

目「ほんとだ」

夕暮れと夜の間の空に満月が浮かび上がっている。

「綺麗だねー」

目「あぁ」

なんだっけ？夏目何とかさんが、月で何か言ってた気がする。

「そろそろ戻ろっか」

彼女との時間が終わろうとしている。確かにそろそろ帰らないと皆心配するだろう。
でも、俺は夏目何とかさんが言った言葉を思い出そうと考えてしまう。

「今日の夕飯は唐揚げなんだー」

彼女の声が遠くに聞こえる。
もう少しで思い出しそうなんだ。

「目黒？どうした？」

あぁ、思い出した。

目「月がきれいですね」

彼女の表情が見える。彼女は

「確かに綺麗だね」

と笑った。
あぁ、伝わらなかった。

「知ってる？夏目漱石は"I Love You"を"月がきれいですね"って訳したんだって・・・昔ある人に教えて貰ったの」

知っていた。俺が伝えたかったか気持ちをAは知っていたんだ。
だけど、目をふせた彼女の表情がとても儚げだった。
どこかに遠くに行ってしまいそうに見えてしまった。

目「A、」

「ほら、戻ろ？みんなが待ってる」

目「・・・あぁ」

何かあったのかと思ったけど、それを聞けるほど俺はまだAと距離が近くないと思った。