叱責 ページ13
FromA
彼の足が止まる
気づけば彼の部屋の前に立っていた
「来い」
そう言った彼の声はまた怒っているようで私は戸惑った
部屋の中に入ると、彼は鍵を閉め、私をベッドに放り投げた
受け身を取る自分の上に、気付けば彼が覆い被さっていた
「それで、お前は何と答えた」
その彼の顔が滅多になく真剣だったので、私は怯んでしまった
彼をこれ以上怒らせないような答えを、頭の全部位を働かせて考えるが、いいものが思い浮かばない
「フランム家の方は少しは困るのでは、と、言いました…」
「それは答えになっていないな」
そう言った彼の眼差しは、まだ痛いほど鋭かった
「もし…お前がいなくなっても私が悲しまないとしたら…それならお前は…あの先輩の庇護でも受けるのか…？」
なんでここで先輩が出てくるのかよく分からなかった
なんで、私が寝返るかのような、そんなことを言うのだ
そんなこと、この家に生まれた以上できやしないのに
「私は…ロベール家の者としての義務を遂行します。なのでフランム家を裏切ることはありません」
はぁ、と溜息をついた彼に、なら何と答えるのが正解なのか分からなくなった
「それじゃ、足りませんか」
「…お前にとって俺はただの『フランム家の次期当主』なんだな」
「ただのではありません。私にとってフランム家は、唯一仕えるべきお家です」
そうではない、と声を荒げた彼に、私は呆然とした
そんな彼、見たことがなかった
「お前は…そうじゃなくても…お前は、俺のものだろう…」
いつもの命令にも似た、でも、自信のない問いかけのようにも思えるその言葉に、私は唖然とした
「私は…ロロ様の…」
確かに私は彼の僕だ、でも、それは彼の所有物と言うことではなく、仕えるべき人だから仕えているという事だった
「私は、ただの従者です」
「なら、どうすれば私の物になるんだ」
泣きそうな、心の底から戸惑っているような声で彼は私に問いかけた
私は、彼がこんなに自信なさげに話す様を見た事がなかった
なんでこの話題にそんなに動揺しているのかも、私には理解ができなかった
彼は私を自分の『物』にしたいのか…？
でも、なんでそんなに私にこだわってるんだ？
私じゃなければ、従者が男なら、その方が嬉しいんじゃなかったのか？
「分からない」が渦巻く頭はどうにも働かなかった
「あぁ、なるほど」
彼の言葉は辛うじて頭に入ってきた
「俺の物にはならないのなら…俺がお前の唯一に、成ればいいのか」
そう呟いた彼は、私の制服に手をかけた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：nagisa | 作成日時：2023年3月8日 3時
