紅蓮の血筋の傍に (ページ2)

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鐘の音の生きる街ページ2

FromA
いつもと同じように、鐘の音が響く
しかしそれは、この無人の礼拝堂の中ではいつにも増して恐ろしげな音として谺した
礼拝堂は個人所有のものなので流石に教会のものほど大きくはないが、高さも奥行きもあるこの空間は、ステンドグラスを通過して床一面に差す夕陽の赤い光も相まって、人がいないとこんなにも不気味なのかと改めて驚いた
週に一度の掃除を何故今回だけこんな時間にずらしたのだろうと自分を責める気持ちも出てきたので、早く終わらせて部屋に帰ろうと、バケツとモップを持って出口へ向かおうとしたその瞬間
「そこで何をしているのだね、君は」
どこからともなく、厳格な声が降ってきた
私は驚き、肩が跳ねてしまった
その反動で跳ねたバケツの水が、私のズボンの裾を濡らしたのを感じた
私はその声の元が分からず、ただその主の気配をする方を見つめた
コツコツと、出口側の螺旋階段を降りる音だけが微かに、しかしはっきりと響いていた
ということは、先ほど声が降って来たと感じたのは些か間違いではなく、その階段の上、パイプオルガンのある2階のバルコニーから声をかけられたのだと合点がいった
そうとわかれば私は安心した
何故なら、ここに立ち入ることので知るのは、今管理を任されている私以外には、私の仕えているフランム家のお方のみしか立ち入ることができないこと、そして、その方々のうち、このような若いお声の方は1人しかいらっしゃらないことを思い出したからだ
「ロロ様こそ、このようなお時間にどうされましたか」
私の4歩先のところまで近づいたところで、その人物は歩みをとめ、パチンという音を立てた
その彼のスナップ音を受けて、近くの燭台に3、４個の火が灯った
「父上のご指示でお前を探していたのだ、A。掃除は月曜の午前と決めているのに、何故」
なんとなく明日にはできなくなる気がしたので、というなんとなくすぎる理由を言うのは気が引けたので、今日の礼拝はいつもより多くのご親族がいらっしゃって汚れが気になったため、といった
「そして…当主様は何故私を…？」
「さぁ、また何か雑用を増やすのでは？」
私の汚れた服を一瞥して放たれた雑用という言葉に少しムッとした
内容は掃除であろうと、私はこの大切な空間の管理には誇りを持って取り組んでいるのだから
しかし、彼の言動に逆らっていては、この仕事は務まらない
私は当主様にお見せできる格好に着替えてくるといって、その場を離れた

「あぁ、後で父の書斎で」