赤に込める意味

夜のあの人 ページ10

fromA
今日は色々と、あの人に買ってもらってしまった…。それを、広すぎるクローゼットにしまった。彼は昨日、私のスーツをしっかりとハンガーにかけてくれていた。彼はさっきから料理をしている。手伝おうと思ったけど、流石自国の料理、って感じで手際が良すぎたので手伝うまでもなかった…。今までは一人暮らしでほぼ自炊だったって言ってたから、驚いた。
「…生活力がありすぎる…あと、お金も。」
結局、結構な値段を払ってもらってしまった。後で返すと言っても、そんなつもりじゃないと言われてしまったし、完璧すぎて、私がいる意味…
「へこむ暇が合ったら、片付けでもしないと！」
折角の休日なんだから、お世話になってばかりじゃだめだ。幸い、さっき、彼に言われた仕事があった。
「えっと、この棚が部屋着と私服…洒落てる…。あと、ここがスーツ、うわ、種類が多いし、生地の季節ごとに並んでる…ネクタイも多いし…カフスまでこんなに…。」と、独り言が出るくらいには、彼の服のレパートリーは多い。シャツも、色んな襟の、色んな色のがある。そして、その隣の棚は仕事着…軍服だ。正直、軍服マニアなのでかなり嬉しい…。
「うーんと、ここの常勤服の…あ、ほつれと、汚れ」
直してと言われた常勤用を数枚、隣の修復室の机に置く。前は直す人を雇っていたらしく、道具が一通り揃っている。軍服は黒に紺、濃緑なので其々の糸と道具を出して、修復する。
「よし、できた！」
埃を取り、ボタンを直して棚に戻した。
「この軍服を、あの人が着るのか…」
考えるだけでイケメンすぎて照れてしまう…私、とんでもない人…？と同居してしまってるなぁと、改めて感じた。その隣の棚には、各軍正装とそれに合わせるコートが各軍用、軍帽が沢山…全て着分けるのか…軍服を愛でている私だが、着る人は大変だな、と初めて考えた。それにしてもこの正装、かっこいいな！
微かなあの人の匂い…。
「うふふ、すりすりしたくなる程好きなの？軍服。」
はっ！うっかりしていた所を見られてしまった…！
「これ、全部着るんですか？」
「うん。僕は軍の着せ替え人形だからね。」
軍服を見つめている間に、彼は私の背後にいた。
「これらは式典用。後で日程渡すから、各軍の制服を天気に合わせて用意してくれると嬉しいなぁ。」
「はい、今、背後から抱き付くのをやめて頂ければ。」
「だって君、呼んでも来ないんだもん。お仕置き。ご飯さめちゃうよ。」
彼に手を引かれて食堂に向かった。

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