【HQ】それを言うなら【短編集】 (ページ9)

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愚痴会の実現は思ったより早かった。

スーツを着た月島くんと居酒屋にいるという状況がどこか非現実的で、なぜか落ち着かない。

「月島くん、明日休みなんでしょ。早く帰りたかったんじゃないの？」

「まぁそれはそうですケド。帰りの時間、気にしなくていいほうが楽じゃないですか」

…そんなに愚痴りたくてしょうがないのか。相当ストレス溜まってるんだなあ。

ビールを飲みながらネクタイを緩める姿がやけに艶っぽくて、私は壁に貼られたお品書きばかりを眺めていた。

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「月島くん酔ってる？」

「何言ってるんですかぁ～バカなんですかぁ？僕が酔ってるわけないじゃないですかぁ」

だめだ完全に酔ってる。

私も背が低いほうじゃないけど、190センチを越える長身の彼を支えながら歩くのは大変だ。かといって千鳥足の月島くんを放り出して帰るわけにもいかない。

「あーもう、ほらちゃんと歩いて」

「ねぇAさぁん、知ってますかぁ？」

「え？何を？てか喋る元気あるなら、」

「タダノブカツさんってぇ、実在しないんですよぉ」

…ん？