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Aに続いてバスを降りると、そこは様々な木々が生い茂る森の中だった。バス停のすぐ目の前には赤い屋根の小屋が建っている。
俺の手を引く彼女は何も言わない。ただひたすら楽しそうに鼻歌を歌いながら、小屋へ足を踏み入れる。
室内には特に変わった様子はなかったが、Aはとびきりの笑顔でこう告げた。
「ようこそ、ハロウィンパーティの会場へ」
「パーティ？ …その割には地味だけど」
「それはね、キミが合言葉を言っていないせいだよ」
はて。合言葉など教えてもらった覚えはない。しばらく考えあぐねてやっと思い当たる。
「…トリックオアトリート？」
「ご名答！」
ぱちん、またもや彼女が指を鳴らす。
するとたちまち部屋の中央に大きなベッドが現れた。またこんなものどこから出てきたんだと呆れたが、Aは構わず分厚い羽毛布団の上に腰かける。
その双眸が妖しく光って俺を捉えた。
「でもね力くん。私もお菓子、持ってないの」
「は…？」
「だからさ、いたずらするしかないね」
好きにしていいよ、私のこと。
お菓子よりずっと甘くて美味しいはずだから、ね？
微笑んだAを、不覚にも綺麗だと思ってしまった。
「いや、お前…何言って…」
「ハッピーハロウィン、力くん。今日は年に一度の、ちょっぴり不思議でとっても楽しいお祭りだよ」
ごくり、と自分の喉が鳴らした音がやけに大きく響いた。
お菓子を持たない者に拒否権はない。
彼女の言葉が脳裏にはっきりと蘇って、餌につられた飼い猫みたいに一歩踏み出す。
誘い込むように広げられた両腕。
ゆるく弧を描く唇。
そのすべてとの距離がゼロになって、そして＿＿
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作者名：なぎさ | 作成日時：2018年9月23日 18時
