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フンフヌーン、とどこかで聴いたような鼻歌を歌いながら上機嫌で歩いていくA。その歩みは思いのほか速く、俺は引きずられるようにして後を追う。
なぜか握られた手を振りほどく気にはなれなかった。
「なあ、どこ行くんだよ?」
「さあ、どこでしょう?」
さっきからずっとこれだ。どこに行くのかと、いくら訊いてもはぐらかされてばかり。
それなら質問を変えようと、俺はこう言った。
「このまま学校サボる気かよ?」
「ご名答! だって今日はハロウィンだからね!」
いや理由になってねえよ。
思わず溜息が出そうになったが、息をつく暇もない。彼女の歩速が異常に速いのだ。競歩でもしているのかと問いたくなってしまう。
「力くんこそ、そのカボチャいつまで抱えてるつもり?」
「は? いや、だってこれ俺の荷物だし…」
自分のリュックならまだしも、学校の廊下にこんなものを置き去りにする勇気はなかった。
元はと言えばAのせいなのに、当の本人は平然としている。そもそも鞄をカボチャに変えるなんて芸当、何をどうしたらできるんだ。
待て、なんだかんだ受け入れてたけどおかしい。鞄がカボチャに化ける? そんな非現実的なことが本当に起こりうるのだろうか。コイツは魔法少女か何かか?
まとまらない思考をなんとか繋げようと躍起になっているうちに、辿り着いたバス停で彼女の足が止まった。
「おっ、ちょうどバスが来たね。乗るよ力くん」
「バス? ちょ、えっと、財布財布、」
荷物の中から財布を探そうとして気づく。
俺のリュック、
まさかこの中に財布が入っているわけはあるまい。だめだ頭が痛くなってきた、ついでに胃も。
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作者名:なぎさ | 作成日時:2018年9月23日 18時