Lateness or Treat!【縁下力】 ページ19
.
朝練終わりに部室棟を出て教室に向かっている途中、見知った顔に遭遇した。
「おおっ、力くん発見！」
「あ、A。おはよう」
「おはよう！ そしてトリックオアトリート！」
ああ、そういえば今日はハロウィンだったな。
お菓子を受け取るべく手を突き出してくる幼馴染の満面の笑みを見ながら、他人事みたいにぼんやり考える。
けれど生憎、彼女の要求には応えられそうにない。
「悪いけど、お菓子とか持ってないよ俺」
空っぽのポケットをわざとらしく叩いてみせる。
ポケットの中にはお菓子が0個。もうひとつ叩いてもやっぱり0個。ゼロは何倍してもゼロのままだ。
しかし予想に反して、俺の言葉を聞いた彼女はたいそう満足げな表情を浮かべた。
「そっか、なら遠慮なくいたずらしちゃおっかな」
ぱちん。
Aが指を鳴らしたかと思うと、どさっと何かが落下した音が響く。
その音源を辿るようにして自分の足元を見ると、先ほどまではなかったものがあった。
「えっ、…は？」
「ふふん。ご覧の通り、なんとキミの鞄はカボチャに化けてしまったようだね」
目の前には戯けた口調の幼馴染。
足元には、消えた荷物の代わりだとでも言わんばかりに現れた大きなカボチャ。
軽くなった肩に信じられない思いで触れれば、確かに背負っていたはずのリュックがない。
「私と一緒に遅刻しよ。ね、いいでしょ？」
お菓子を持たない者に拒否権はないんだよ。
そう言ってウインクをした彼女に手を引かれ、俺は訳も分からぬまま学校を飛び出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なぎさ | 作成日時：2018年9月23日 18時
