【HQ】それを言うなら【短編集】 (ページ15)

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カップ麺の妖精【宮治】ページ15

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「初めまして。私、カップ麺の妖精よ」

彼女は微笑んだ。最初は自分の目を疑ったものだ。

お湯を入れて3分きっかり、ようやく鳴ったアラームを止めて、さあ食べようというときに気がついたのだ。
カップラーメンの上にちょこんと腰かけている、小さな小さな女の子の存在に。

ここんとこ仕事が忙しかったから、疲れて幻覚でも見とるんやろか。そう思って目を閉じ、10秒後に再び開いてみたが視界に映るそれは消えてくれない。

同じ部署の同僚が言っていたことを思い出す。曰く『家で可愛い女の子が待っててくれれば、もっと仕事頑張れるのにな』と。もちろんその話を遠巻きに聞いていた俺も、心の底から共感して思わず頷いたものだ。

けど、これはなんか違う。

「あら、無視するのね。ひどいわ、見えてるくせに」

「…こんばんは？」

「ええ、こんばんは」

やっぱり、これはなんか違う。
可愛い女の子、ってこういうことやない。確かにサイズ感とかちっさくてかわええけども。

ひとこと挨拶したきり呆然としている俺を見て、彼女は不思議そうに首を傾げた。

「食べないの？伸びちゃうわよ」

「はあ、まあ…あの、どちらさんですか？」

「言ったじゃない。カップ麺の妖精」

そうですか、と気の抜けた返事しかできない。

卓袱台の端におとなしく座った彼女を見て、俺は信じられない思いで伸びかけの麺を啜った。