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言ってからとんでもない後悔に襲われる。
いや別にここで孤爪くんと会話する必要はないし、私はただ煩いだけの迷惑な女なのでは?
ていうか顔見知り以下の存在である私から髪型についての感想なんてクソほどいらないのでは?
考えれば考えるほど暑さによるものとは違う汗が出た。
案の定、孤爪くんはぽかんとしているし私たちの間には深い深い沈黙が下りている。
そもそも会話というものは遅かれ早かれ必ず終わるわけだし、私は何に焦っていたのだろう。
止まらない冷や汗が背中を伝うのを感じつつ、逸らしてしまった視線をもう一度孤爪くんに向けると、
「…そうかな。ありがと」
孤爪くんは少しだけ笑っているように見えた。
「…あ、ああ。うん」
私がやっとのことで返事したのを見届けたかのようなタイミングで、また手元の画面に集中する孤爪くん。
真夏の太陽を受けて輝く金髪が彼の横顔を隠した。
寸前に見た頰がほんのり朱に染まっていたことは、誰も知らない私だけの秘密である。
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(終わり)
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作者名:なぎさ | 作成日時:2018年9月23日 18時