【HQ】それを言うなら【短編集】 (ページ11)

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金髪の奥【孤爪研磨】ページ11

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夏が来た。

暑い。とにかく暑い。エアコンの設定温度が職員室で管理されているからか、教室はちっとも冷えてくれない。

どうにもノートをとる気にはなれなくて、差し込んでいた下敷きを抜き取って自分に風を送る。

少々不真面目な態度だが、黙って座っているだけで汗が滲んでくるようなこの場所で、まともに授業なんか受けていられるわけがないのだ。

窓際の席の人に窓を開けてもらおう。

そう思って左隣の列を見たら見事に全員寝ていた。

目論見は失敗である。
このクソ暑いのによく寝てられるな、なんて心の中で毒づきながらもう一度その列を眺めて、ふと気がつく。

隣の席の男子生徒が、寝ているように見えて実は手元でこっそりスマホをいじっていた。

確か数回程度しか喋ったことはないけれどこの際なんでもいい。窓さえ開けられればいいのだ。

私は手を伸ばして、彼の肩をとんとんと叩いた。

「ねえ、孤爪くん」