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｢お待たせ｣
｢んー、ありがと｣
誰も居ない、二人だけの世界みたいなそんな所にいる気分にさせられる
｢美味しい。少し甘めが私には丁度いいや｣
｢お気に召して何よりだよ｣
寂しそうに微笑む彼女。普段、キレてるか大笑いするかとかしかしない彼女のそんな表情に焦ってしまう
｢…バラティエに居た時ね、ジジイが教えてくれたの｣
｢？｣
｢酒にも、出す意味がある。その酒そのものにも相手に伝えようとする意味があるんだって
意味もなくアンタが悪魔の実図鑑読んでたみたいに、私も同じような本読んでたよ｣
グラスに入ったマンハッタンを揺らして、誘うかのように呟く
｢マンハッタンのカクテル言葉は【切ない恋心】
好きとか言えない奴にはおあつらえ向きなのさ｣
……反則、だろ。その目は。レディらしい(というのは失礼だけど)、とろんとした目をしないでくれ
｢……へぇ？｣
｢サンジのは…あぁ、カンパリオレンジか｣
ふわりとしたプリンセスドレスの裾が小さく揺れて
｢カクテル言葉は【初恋】だったっけ｣
……知らない訳ねェだろ。これでも俺だってコックだぞ
｢サンジの初恋ってナミ？ロビン？｣
｢……違う｣
｢そりゃまた意外だ。だれ？｣
そっと、カンパリオレンジのグラスを置いて、幼馴染をグイッと寄せる
｢……！？｣
びっくりしてるけど、それもまた計算の内だ。額に軽いキスを落として
｢……テメェだよ｣
誰もいないのに耳元で囁くと
｢……っ、…………うれしい｣
怒るかと思ったのに、出てきた言葉は乙女そのもので
｢……サンジ｣
｢なに？｣
｢…っ、口が、いい｣
満天に輝く星空が証人の、恋人になる約束の口付けを交わす
ほんの少しの苦味と、たっぷり味わえる甘味と共に
確かな繋がりを、俺とユリアは結んだ
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