【ワンピース】泡沫に消える【サンジ】 (ページ22)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:28,645 hit

男のキスは煙草の味ページ22

誰にもナイショの話だが、私は煙草が嫌いだ。ん？なぜナイショの話なのかだと？幼馴染がヘビースモーカーだからだ

だから嫌いだなんて言えない。ほろ苦いようなあの味はどうも苦手で

吸ったことがあるかって？あるさ。1回だけな。サンジに進められたんだよ

不味いのなんのってね。よく吸えるよなお前と言ったことがある

｢煙い……ゲホッ｣

｢下手くそなんだよ、吸い方ってのがあってだな｣

そんな会話は2年以上前、まだ私とサンジがバラティエに居た時の話

そして今、そのバラティエが壊されかねない結婚式が執り行われる

あくまでも私は仲人としてホールケーキアイランドに滞在しているがその実は人質だ

何年も隣に居た幼馴染は、今や一国の王子で新郎だ

……別に恋人というわけじゃない。むしろ、それで幸せになるのならそれもいいと思った

なのに何故だろう。何故私は泣くのだろう。涙が止まらない。苦しい。痛い。辛い

(涙なんて、もう出ないと思ってたのに)

泣いたら皆が死ぬ。好きだった名前を捨てなきゃ皆が死ぬ

そう言われ続けた女はもう涙を見せなくなっていて

……ジジイから貰ったこの名前で過去を捨てきれたつもりだったのに

思い出した記憶の中の、ヴィンスモーク・サンジは私と同じように泣いている少年だった

だから、救いたかった。どんな手でもいい。彼を助けたかった

なのにまた、私は彼に救われようとしている

｢馬鹿だなぁ……俺……｣

なぁ神様よ。もしも……居るのなら答えておくれ

この想いはどうすればいいですか？捨てる為には何をしたらいいですか？

涙を止める為に、私はどうしたらいいですか？