004・暁天の旅立ち ページ6
「そっちの方がいい」
ふいに、彼がそんなことを言った。
なんの事か分からずAは首を傾げ青年を見つめる。
「笑ったな。泣いてる顔より笑ってるほうが似合ってる」
他人事のように、Aはその言葉を聞いていた。
だか、それが自分のことだと理解した瞬間溶けそうなくらい顔が熱を持つ。
おろおろ目線をさまよわせていると、光が彼の横顔のシルエットを白く照らした。
目線を向けると、洞窟の入り口から光が差し込み朝日を受けて朱鷺色に輝いていた。
「夜明けだ。行こうか」
よく覚えているこの時の青年の声はひどく甘く優しかった。
洞窟を出ると眩しくて手を翳し目を細めてしまう。
光に慣れ目を開くと、雪は止んでいて美しい景色が目に飛び込む。
「綺麗‥‥」
空気がきりっと澄み渡り朝日が山々の新雪を照らし桃色に輝いていた。
物珍しく眺め魅入られたように茫然と立ち竦む。
「この道を真っ直ぐ行くと街がある。そこに行くといいよ」
青年の声に現実に引き戻される。
「僕は一緒に行けない」
「どうして？てっきり居てくれるもんだと、」
悲しげに肩を落としうつむく。
と、手のひらに何かを押し込まれる感触にAは目線を上げた。
「これ‥‥」
手の中にはお札の束らしきものがあった。
「少ないけど使って‥そろそろ行かないと」
そう言われAは口ごもった。
様子を見かねた青年は「ごめんな‥」と眉を寄せ詫び。
そして、私の頭をポンポンと撫でる。
青年を見れば、その瞳に優しさが満ちていた。
「元気でな」
「あ‥‥、待っ‥て‥」
引き止める間もなく青年は踵を返し去っていく。
一度も振り返ることはなかった。
遠のいていく影に、感謝の気持ちを込め深々く頭を下げ姿が見えなくなるまで見届け。
Aは朝日に背を向け一歩を踏み出した。
確信はないけど、青年とはいつかまたどこかで会えような気がした。
ーそう。
あの日から、"記憶を取り戻す" 旅が始まったのだ。
「いらっしぇーい。お嬢ちゃん、御注文は？」
「ステーキ定食で、焼き方は弱火でじっくり」
ナビゲーターに教えてもらった合言葉を告げるとピクリと反応する。
「あいよ」
「お客様、奥の部屋へどうぞー」
ステーキが焼ける香ばしい匂いを残して、奥部屋に案内され中に入ると鈍い音を立てて下へと動き出す。
どうやら部屋自体がエレベーターになってるみたいだ。
Aは、口元を緩めてみせた。
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 179人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カラス - ヒソカたまらん、、更新楽しみです待ってますー (2021年9月3日 4時) (
レス) id: 2cdebcf1aa (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - めっっちゃ萌えます‥！！ヒソカの変態っぷりも良いですし出会い方やストーリーがめっちゃ好きです‥！！(*≧∀≦*)ぜひ更新よろしくお願いします！m(_ _)m (2019年8月13日 0時) (レス) id: cdff23c672 (このIDを非表示/違反報告)
ユキナ(プロフ) - フェイタン天使さん» ありがとうございます！！やる気が出て更新しました、笑 良かったら引き続き読んでください！よろしくお願いします(_ _) (2017年9月6日 3時) (レス) id: 427ac8eeed (このIDを非表示/違反報告)
フェイタン天使(プロフ) - ヒソカあああああああああああ！！！優しい少年の方も萌えたけど、今の変態ヒソカの方も十分に萌えます！！更新待ってますw (2017年9月5日 22時) (レス) id: 36a76390b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：樹枝六花 | 作成日時：2017年8月24日 23時
