002・空っぽな私 ページ4
「なに?」
冷たい声にハッとして裾から手を引っ込め、代わりに自分の拳を握りしめた。
「あの‥‥その‥‥な、なんでもない‥」
押し黙る青年に、ごめんなさいと無理に笑顔を作り視線を逸らす。
本当は行かないでほしい、一人にしないでほしい。
ここで見放されたら、これからどうしたらいいの。
と、思う一方で青年に迷惑をかけなくない。
そんないろんな感情が入り混じってうまく言葉になってくれなかった。
気がつくと、霰あられまじりの雪へと化けていた。
前が見えなくなるほどに、まるで私の心模様を表してるようだった。
そんなこと思っていると、私より大きな手が肩と腰に触れた。
体を弾ませ目を見開いた時には、宙に足が浮き視界が逆転する。
「‥‥えっ?」
青年が私を俵のように担ぎ上げていたのだ。
「動かないで、落ちるよ」と物静かな声でジタバタする私を制す。
そのまま壊れ物を扱うかのような足取りで洞窟へと向かい。
着くなり私を地面に下ろし、自身が着てたマントを脱ぎそれを私の肩に掛けた。
ふんわりと石鹸系のいい匂いがした。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
戸惑いながらも青年が腰掛ける隣に座った。
が、ものの何を話していいのか分からず口をつぐんでしまい。
そして、思い出したかのように静寂が私達を包み込んだ。
先刻よりいっそう強まったのか吹雪の音が潮騒みたく響いた。
時間が経つにつれ手足の麻痺が取れじんわり温かい熱に浸っていると些細な疑問を投げかけられる。
「どうして、薄着で雪道を?」
「分からない。気がついた時には‥あそこに居て、何も思い出せないの、どこから来たのか。自分が誰なのかさえ」
私は一体誰なの。
ぎゅっと不安そうに足を抱き抱えた。
「何も覚えてない?歳は?名前は?」
一瞬考え込むが険しい表情で首を横に振った。
「君、記憶喪失だな。一時的なものかはたまた‥‥」
その言葉が不安と恐怖を増幅させ私の心の内側を食い散らかしていく。
ぽっかり空いた穴の中は漆黒で恐怖を伴って、私を押し潰そうとする。
「私これからどうしたら‥‥」
涙が溢れ視界が滲む。
滝のように溢れ拭いても拭いても止まらない。
「大丈夫、なんとかなるよ」
青年の胸にすがりついて嗚咽を洩らす。
長い手がそっと伸び塗り薬を傷に擦り込むように背中をさすり続けてくれた。
手の温もりが心地よく。
次第に意識を手放しまどろみの中へ沈んでいた。
ラッキーカラー
あずきいろ
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カラス - ヒソカたまらん、、更新楽しみです待ってますー (2021年9月3日 4時) (レス) id: 2cdebcf1aa (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - めっっちゃ萌えます‥!!ヒソカの変態っぷりも良いですし出会い方やストーリーがめっちゃ好きです‥!!(*≧∀≦*)ぜひ更新よろしくお願いします!m(_ _)m (2019年8月13日 0時) (レス) id: cdff23c672 (このIDを非表示/違反報告)
ユキナ(プロフ) - フェイタン天使さん» ありがとうございます!!やる気が出て更新しました、笑 良かったら引き続き読んでください!よろしくお願いします(_ _) (2017年9月6日 3時) (レス) id: 427ac8eeed (このIDを非表示/違反報告)
フェイタン天使(プロフ) - ヒソカあああああああああああ!!!優しい少年の方も萌えたけど、今の変態ヒソカの方も十分に萌えます!!更新待ってますw (2017年9月5日 22時) (レス) id: 36a76390b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:樹枝六花 | 作成日時:2017年8月24日 23時