ep.3 ページ3
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丈「 A 」
「 丈くん、！ 」
丈「 中で待っといてええよって言ったやん笑 」
「 ん〜、でもここで待ってた方がすぐ丈くん見つけられるから 」
丈「 なんやそら、可愛ええやん 」
さらっとそんなことを言って
行こか、と手を差し出されて素直にその手を握る。
夢みたい。ふわふわして足が浮いてるみたいなそんな気分
丈「 あのいつものとこでいい？ 」
「 …うん、いいよ！ 」
丈「 他のとこが良かったら言ってな？ 」
「 ううん、私あそこのカヌレ好きだから、！」
丈「 そか笑 」
いつものとこっていうのは、丈くんの年の離れた幼馴染の麻里子さんが経営するカフェのこと。
丈「 こんちわ〜 」
麻「 いらっしゃいま…丈一郎、とAちゃん！ 」
「 こんにちは 」
チリンチリン、と店内に響く鈴の音と共に麻里子さんが振り返って
私たちを見るなり駆け寄ってきてくれた。
麻「 ありがとね来てくれて〜！」
「 麻里子さんのカヌレ大好きなので、！ 」
麻「 やだ可愛い 」
そんなことをしてる合間に丈くんはもうカウンター席に腰掛けていて
丈「 麻里姉、俺あのケーキがええわ 」
麻「 あ、今Aちゃんで手一杯だから丈一郎はセルフで 」
丈「 なんっでやねん！笑 」
ものすごく綺麗な風貌からは想像出来ない豪快な麻里子さんの笑いは、店内を明るくする力がある
ボーッと2人の姿を見ていると
丈「 A、おいで 」
「 …あ、うん！ 」
普通のより高めのカウンターの椅子は、少しだけ座るのに苦労してしまう
丈「 座れる？ 」
「 うん、だいじょう…ぶっと、 」
丈「 落ちんでな笑 」
「 バカにしてる？笑 」
肩を少し叩くと、優しい顔で笑う丈くん
ハッと前を見ると麻里子さんがニヤニヤと笑いながら紅茶を入れてくれてて、
麻「 …や、ほんと丈一郎にこんな素敵な彼女が出来て良かった、」
丈「 おかんか 」
麻「 おかんみたいなもんでしょ、あんたがこんなぐらいの時から見てるんだから 」
丈「 うるっせ、はよ彼氏作りや 」
麻「 あっ、あんたケーキなし！ 」
髪をわしゃわしゃとされる丈くんは、いつもよりどこか寂しげ。
私は知ってる。
丈くんが麻里子さんに想いを寄せてることを
だけど私は今日も知らないフリをする。
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作者名：凪 | 作成日時：2022年9月28日 1時
