ひよりという少女 ページ7
泣きたくなっている場合ではないと自分の頬を思い切り叩く。
この子は自分を犠牲に私の神様を救ってくれたのだ。感謝してもしきれない。
「大丈夫ですか?!どこかお怪我は……?」
体は傷一つ無く、綺麗なままだった。
本当に驚いたがそれよりも、だ。
「……魂が、抜けている、?」
目の前で夜ト様を叱る少女に生えた尻尾は魅惑的だ。妖の本能のようなものが、体の深いところで少しだけざわつく。
これは、大事ではないだろうか……?
「ひより!ひより!」
駆け寄る友人の緊迫した様子に、この子はひよりと言うのか、とぼんやり考える。
私はこの先を想像しては頭の中がぐしゃぐしゃに掻き回された。
考え事のせいで途絶えていた音が戻ってくる。そんな内に救急車で運ばれていってしまった、そのひよりという少女にお礼を言いそびれてしまったことに今更ながら気がついて、慌てて走り去る救急車に深く頭を下げた。
「なあA、あの娘、どうしたもんか。」
やれやれと隣に並んだ夜ト様。私は今日一番の深いため息をついた。
「夜ト様。……良い大人なのですから車のご確認くらいなさって下さい!危ないでしょう?!」
「ごめんなさいッ!!」
しょんぼりと俯いた子犬のような姿にどうしても許してしまいそうになるのを我慢しながら、私は思考を止めるように口を動かす。
「謝りに行きましょう。助けて貰ったお礼もしなければ。」
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まチョコ - 上手すぎやろ。喋り方までそっくり。面白いし感動した。 (2021年9月1日 18時) (レス) id: 310d4b66e7 (このIDを非表示/違反報告)
琉那(プロフ) - めっちゃ面白いです (2019年9月30日 21時) (レス) id: 60dcb24f8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜狐 | 作成日時:2019年8月24日 23時