【ノラガミ】妖少女は夢を見る (ページ42)

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愛と呼ぶページ42

雪音くんが、ばっ、と夜ト様に振り返る。

「よし！俺の隣に居ろって言え夜ト！」
「え。」

夜ト様がびくりと驚いて「え？？」と再度声をあげて首を傾げる。

「あんたも俺もAがいなきゃ駄目だろ！？人畜無害そうだし妖としてはノーカンだ！」

癇癪を起こした子供のように、拾ってきた動物を飼うと言い張る子供のように、雪音くんが私を指差した。

「(人畜無害そう……、？)」

別の意味で泣きそうになりながら呆然とする。

「こいつと俺だけは手放さないんだろ？！」
「、雪音。」

雪音くんが詰め寄って夜ト様のジャージを握りしめた。祈るような瞳、心がきゅうと締め付けられて嬉しくなる。

「Aが夜トを裏切ったことないだろ。」
「……ああ。」
「そうだ夜ト、Aはヴィーナに祓われることも覚悟の上で僕のところに来た。」

兆麻さんが私の背中を支える。夜ト様はふらりと座り込んだ。

「夜ト！」

ひよりさんが駆け寄る。私はのろのろと、崩れるように夜ト様の目の前で正座した。

「ごめんなさい。都合の良いことを言っているのは分かっています。でも、貴方の神器でいたかった。」

深く頭を垂れる。
ひよりさんが張り詰めた顔で視線を注いでいた。……得体の知れない存在の言うことを信じろというのは確かに難しいことだ、と目を閉じる。

「……死霊、にしては不自然だと思っていた。お前は名前も覚えてたしな。」
「夜ト様……、」
「全部合点がいった。理解もした。……そして、俺はお前が居ないと駄目だ。」
「えっ。」
「これからも隣に居てくれ。俺から離れないでくれ。」

ぐったりと、疲れたような声に思わず顔をあげれば困ったように笑う夜ト様が倒れこんできた。抱き留めれば「お前じゃないとこうやって受け止めてくれないからな。」と抱き締められる。

あったかい。愛しい人の熱。

すがるように抱き締めれば背中に視線が突き刺さった。

「……夜トちゃんだけAを独り占めしてずるいよ。」
「、小福ちゃん、今呼び捨てで……？」
「だって私の一番のお友達だもん。」

涙を擦った目元は少し赤く腫れていたけれど、いつも通りに可愛らしく笑って、小福ちゃんは私の背中に抱き着いた。

「Aちゃん髪さらさらだねぇ。尻尾もふわふわー！」

前も後ろもぽかぽかする。

「(……幸せって、こういうことをいうのか。)」

滲んできた涙を隠すように、夜ト様の肩に額を乗せる。

最大の感謝と、愛を込めて。