貴女を想う ページ40
小福side
初めて会った時は可愛らしい子が夜トちゃんの神器になったなと思っただけだった。
次にあったのはAちゃんがヤスんでいた時。妖だと聞かされて内心はとても驚いたけれど、私はこの子が大好きになっていた。優しい私のお友達。
もし何かがあったとしても、夜トちゃんに捨てられたとしても、私が守ってあげる。私の神器にしてあげる。ずうっとそう思っていたけれど、やっぱり駄目だ。
「(Aちゃんは夜トちゃんを愛しているから神器として形を保っているんだもん。)」
私じゃ駄目なの。夜トちゃんじゃなきゃこの子は人で居ようとしない。
それなのに、どうしてAちゃんは諦めちゃうの?もっと積極的にならなきゃなのに。誰かの為に何かをしようとしているのなら妖も人も同じだって言ったのに。
夜トちゃんはひよりんや大黒達、勿論Aちゃんにも救われた。幸せにして貰った。
じゃあこの子は誰が幸せにしてあげるの?誰が幸せにしてくれるの?
「兆麻さんが、私のことを褒めて下さったんです。」
「?良かったな。」
どうして、どうして、Aちゃんは幸せになれないの?妖だから?そんなの違う!
Aちゃんは自分に与えられた幸せも、向けられた愛情も、分からないんだ。だから全部遠ざけて、知らないのと耳を塞ぎ続けている。
「(そんなの、駄目だよぉ……っ、)」
Aちゃんは幸せにならなきゃ駄目、とわんわんと泣きじゃくる。大黒が背中を撫でてくれる。
綺麗なお狐様は私を見て、額に優しい口付けを落として、ありがとう、と口だけ動かしてそう言った。
別れを告げるような、ずるい温もり。
どうか、誰か、夜トちゃんがAちゃんを拒絶しませんように。私のお友達を、奪っていきませんように。
初めて見たあの子の銀色が電気に反射してさらさらと、きらきらと、美しく揺れている。
まるで、絵本の中のお姫様だ。
「(また、小福ちゃんっていつもみたいに笑ってよ"A"。)」
103人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まチョコ - 上手すぎやろ。喋り方までそっくり。面白いし感動した。 (2021年9月1日 18時) (レス) id: 310d4b66e7 (このIDを非表示/違反報告)
琉那(プロフ) - めっちゃ面白いです (2019年9月30日 21時) (レス) id: 60dcb24f8e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜狐 | 作成日時:2019年8月24日 23時