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真実 ページ39

小福ちゃんは、私のことを知りすぎてしまったのだろう。

「何をそんなに怒ってんだよ小福。」
「Aちゃんのこと、もう少し考えてあげて。」

いつもと違う雰囲気に部屋の中は静まり返った。するりと立ち上がれば兆麻さんが私を見上げる。

口に人差し指を押し当てて。
私はゆっくりと歩き出した。

「言ってる意味が分からねぇんだけど。」


「、Aちゃんには夜トちゃんしかいないの!!」


「……、何言ってんだお前、?」

焦る夜ト様に、突っ掛かるように小福ちゃんが口を開こうとする。苦しそうで、寂しそうで、優しい瞳だった。

こんなに傷付けたのはまごうことなく私。



「いいの小福ちゃん、ありがとう。分かっていたことだもの。」

そっと抱き締めて精一杯感謝を伝える。泣きそうになってうつ向いた小福ちゃんは悔しそうに眉を寄せていた。


片手で簪を引き抜く。
髪の毛は重力に逆らわずに落ちていった。

ごめんなさい。

「それに、私はもう裁かれなければいけないのだから。」


小福ちゃんが、青ざめる。


「駄目、駄目、っ!やめてAちゃん!!!」


すがるように私の袖を掴んだその手に自分の手を重ねて笑った。


「私が禊に参加できなかったのは私が神器として許されない存在だからです。」
「やめてぇ!!」
「何言って……、」
「私は死霊ではありません。」


髪が銀色に染まっていく。
夜ト様は呆然と見つめていた。

「(ああよかった。夜ト様の体に影響は出ないのね。)」


金色の瞳に銀色の髪、尖った狐の耳と柔らかそうな尻尾。

言葉にすれば可愛らしい響きだろうか。

しかし、目の前に見たこともないような生き物がいれば人の反応なんて限られてくる。


「妖……?」
「正解ですひよりさん。私はとある村で生け贄として生かされていた異端児。神に供物として捧げられて、気紛れにその魂を分けて貰った何にもなれない存在。」

ぼろぼろと涙を溢している小福ちゃんの背中を大黒さんが撫でている。

本当に優しい私のお友達。

「人にも神にも妖にもなれない不安定な生き物です。」



「初めから、俺を騙していたのか?」
「はい。」

心を掻き回されたようなどす黒い感情に襲われる。袖の下でヤスみが広がっていくのを感じながら、震える体を押さえ付けて頭を下げた。

「私は、人になりたかったのです。」



深い悲しみ。
騙してきた報いと呼ぶにはあまりにも痛烈。

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まチョコ - 上手すぎやろ。喋り方までそっくり。面白いし感動した。 (2021年9月1日 18時) (レス) id: 310d4b66e7 (このIDを非表示/違反報告)
琉那(プロフ) - めっちゃ面白いです (2019年9月30日 21時) (レス) id: 60dcb24f8e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜狐 | 作成日時:2019年8月24日 23時

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