繋いだ手を離さぬように ページ33
声を頼りに辿り着いたその場所は高校だった。
「起爆剤だ。」
全く話は読めないが、何となく聞こえてきた単語を繋げていくと、今は新しい依頼の最中で、誰かの受けているいじめを解決するために、起爆剤?を渡したらしい。
「……学校、か。」
雪音くんはきっと、苦しみながらも憧れに抗えずにいるのだろう。
「A?」
「え、?」
ぱっと見上げれば窓枠に足をかけた夜ト様が驚いたような瞳で此方を見下ろしていた。
「、この阿呆!」
「夜ト様、?!!」
甲高い声が空気を揺らす。窓から飛び降りた夜ト様を、生きた心地のしないまま跳び上がって、抱き留める。
もしも体が前のままだったなら……考えたくもない。
「俺を一人にしやがって、帰りが遅いぞ。」
「お願いですから、無茶なさらないで下さい……。」
ちらりとみえたうなじは紫色に変色していて背筋が凍る。咄嗟に伸ばした手は夜ト様の手に吸い込まれた。
「来い、依頼だ。」
「……はい。」
カッターナイフを捨てた少年と夜ト様を眺める。ちらりとひよりさんが視線を向けた。いつの間にか戻ってきている私に驚いたのか、それとも繋ぎっぱなしの手のことか。
「(……繋いでいないと、倒れてしまうのだから仕方がない。)」
素直に喜ぶことも出来ない。抱き留めた時も、今も、示しているのは夜ト様の限界だけだった。
「一人でいい、唯一無二の誰かを見つけろ。」
唯一無二、きっとそれは私ではない。それでも、夜ト様は私の手をとった。
小さな喜びと共に心臓が跳ね上がる。
「you、やっちゃいなよ。」
妖の、人をたぶらかす悪魔の囁き。
恐らくこれは、雪音くんの最後の砦を壊すものだ。
雪音くんが壊れてしまう。
金色の瞳は一際強くその美しさを灯した。
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まチョコ - 上手すぎやろ。喋り方までそっくり。面白いし感動した。 (2021年9月1日 18時) (レス) id: 310d4b66e7 (このIDを非表示/違反報告)
琉那(プロフ) - めっちゃ面白いです (2019年9月30日 21時) (レス) id: 60dcb24f8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜狐 | 作成日時:2019年8月24日 23時