【ノラガミ】妖少女は夢を見る (ページ32)

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手のぬくもりページ32

【夜トside】

大丈夫ですから、とAが言った。

あんなに顔色が悪いやつが大丈夫な訳がないと分かっていた筈なのに、俺は止められなかったのだ。

「雪音くんを一人の人として扱ってあげて下さい。」

ひよりの言葉は重く、少しだけ苦い。
俺は初めから人間として扱っているつもりだった。

「(思えば、Aは一度もそんなことを言わなかったな。)」

初めて会った時は少女そのものだったのに、たった一年で酷く美しい女になったように思う。特にやましい思いは無いのだ。ただ、本当に綺麗になったと思う。頼りになる上に、俺への礼節は欠かさない。

勿体無いほど出来たこの神器は、もう手離せない俺だけの大切な相棒だ。

だから、大丈夫というAの言葉も、疑わず当たり前に信じられた。

「こいつはろくでもねぇクソガキだが、俺が見つけて俺が名付けた。雪器は俺が鍛える。」

手を差し出していた野良を睨み付ける。
もう俺には雪音とAだけで構わない。

ああ……頭がくらくらしてきた。

「(あいつの手、冷たくて気持ちよかったな。)」

この気持ちに無理矢理名前をつけるのなら、恋しい、なのだろうか。