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愛を誓う ページ31

地面に足をつければ、桃色のマフラーが軽やかに跳ねた。

「ひよりさん。夜ト様を宜しくお願いします。」

次の仕事先だと言っていたコンビニまで何とか逃げ延びる。青ざめた顔。自分の額の汗を乱暴に拭ってひよりさんに夜ト様を預けた。

「え、あの、」

「すいません。なるべく早く戻ります。」

夜ト様の不安げな青い瞳に笑い掛ける。きっと酷く下手くそな笑みだ。

「すぐ戻るので少しだけお許しくださいね、夜ト様。」







走り出したその先は小さな神社。初めて出会った雪音くんの刀身を清めたいつかの井戸。

「(この穢れを落としきらない限り、私はあの人の神器ですらいられない。)」

「……。」

汲んだ水を惜しみ無く頭から被る。何かの焼ける音と、身を引き裂かれるような痛みが身体中を襲った。

「あああ"、っあ"、っ。」

崩れ落ちるように倒れこんで地面に爪を立てる。気が狂いそうな痛みにもがきながらも頭を動かした。

「(夜ト様、夜ト様。)」

泣きそうに目を細める。



「(貴方の手の暖かさを、優しさを。体の冷たさを、笑みを、私は知っている。)」


思考は朧気だ。外れた簪のせいで髪が地面に広がってのたくり回る。痛みに耐えられるのは、まごうことなく情愛。


「(だから、私は、貴方の幸せを願い続けられる。隣にいるのが、私ではなくとも。)」


毛先が銀色に染まり始めたのを歯を食い縛ってどうにか元に戻す。



「(愛しています、……最期まで。)」



痛みが引く頃には何もかも汚れていて、見るに耐えなかった。

水を吸った着物についた土を払って、爪の先から滲む血を水で流して、髪を整えて、涙を拭う。

体はもう動く。後は、進むだけだ。


縺れるように辿々しく歩き出して、やがて走り出す。
この体はもう、傷付くためにそこにあるようなものだった。

手のぬくもり→←無力感



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まチョコ - 上手すぎやろ。喋り方までそっくり。面白いし感動した。 (2021年9月1日 18時) (レス) id: 310d4b66e7 (このIDを非表示/違反報告)
琉那(プロフ) - めっちゃ面白いです (2019年9月30日 21時) (レス) id: 60dcb24f8e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜狐 | 作成日時:2019年8月24日 23時

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