日差しとアスファルト ページ25
じりじりと肌を焼くような日差しに目を細めた。
「一線!」
雪音くんが少しずつ、確実に成長しているのを嬉しく思いながら、私はえもいわれぬ不安に駆られる。
少し前に突然頭痛がして、予知を見ていた。断片的なそれは、苦しむ夜ト様と恐れる雪音くんの表情だけだったが、何となくこうなるのでは無いのかと思っていたことだった。
「A!出来た!」
子供のようにはしゃぐ雪音くんを沢山褒めて、私は夜ト様の方へ振り向く。
「雪音くんは私が責任をもって預かります。」
「……え、?」
ひよりさんの思わぬ言葉に変な声が出た。
雪音くんの練習を眺めている間に何か変なことになっていたらしい。
「……同じ屋根の下なんかで暮らしたら雪音にやましい考えが生まれまくるに決まっている。そうすると俺が痛い目にあう。絶対駄目だ。」
目元を歪めた夜ト様に思わず私も「その通りです。」と言ってしまいそうになる。
「雪音くんは良い子だから大丈夫です。そうじゃなくたって夜トは家もなく、ちゃんとした生活が送れていないのに、女性に対して不純すぎて保護者失格だと思います。……理由があるとは言え、Aさんのこと、私は、納得した訳じゃ無いですから……。」
私から気まずげに目をそらしてから、ひよりさんは雪音くんに、帰ろう、と呼び掛けて手を引いていった。
落ち込んだように地面の土をいじり始めた夜ト様の背中を、そっと叩く。
「……今の雪音くんにひよりさんと同居は難しすぎます。」
もうこの際、ひよりさんに信用されていようとされていまいと関係ない。
これはあまりにも危険な行為だ。
「……そうだな。連れ戻すぞ、A。」
顔色の悪い夜ト様の瞳が鈍く光って苦しくなる。
ゆっくりと、体も心も、蝕まれているようだった。
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まチョコ - 上手すぎやろ。喋り方までそっくり。面白いし感動した。 (2021年9月1日 18時) (レス) id: 310d4b66e7 (このIDを非表示/違反報告)
琉那(プロフ) - めっちゃ面白いです (2019年9月30日 21時) (レス) id: 60dcb24f8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜狐 | 作成日時:2019年8月24日 23時