【ノラガミ】妖少女は夢を見る (ページ22)

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小さな幸福をページ22

ヤスみが治りきって痛みが引いた。

……もう、騙せない。
それならばいっそ、小福ちゃんに話してしまおう。

「私、妖なの。」

泣きたくなって、笑った。

「要するにAちゃんは狐の神様の魂で妖になって、夜トちゃんに拾われて神器になっちゃって、自分でヤスみを肩代わりできるってこと？」

思わず拍手してしまうような簡潔さ。頷けば小福ちゃんの顔色は幾分か明るくなった。

「じゃあAちゃんは良い妖ってことだ～！」

呆気にとられる。私が、良い妖……？
まさか。妖に善悪なんてあるわけが無い。許されるわけがない。

「おい小福、Aちゃんの顔色が悪いぞ。ちゃんと分かるように言ってやれ。」

大黒さんが肩からずり落ちた私の羽織をかけ直してくれる。きっと、今の私は酷い顔をしているのだろう。

「そっか、Aちゃんは不器用さんなんだね。私は誰かを守りたいって思えて、その人の為に一生懸命頑張れるAちゃんは、当たり前に良い子だなぁって、思うの。妖だから本当の神器になれないなんて、妖だから何をしても許されないなんて、そんなのに妖か死霊かなんて関係ないよ。」

桃色の髪が大きく揺れて、私に飛び付いた。

ああ、暖かい。

「だってAちゃんは、Aちゃんだもん。夜トちゃんの役に立ちたくてヤスみまで引き取っちゃうなんて、すごーく夜トちゃん想いっ！……ね、人として生きてきた妖はもう、人とおんなじだよ。」

優しい声、優しい神様。私のお友達。
ぼろぼろと溢れる涙が、小福ちゃんの指に拭われる。大黒さんがそっと背中を撫でてくれてい
た。

「何か心がもやもやざわざわすると思ったら何やってんだ小福！」

すぱーんっと襖を開け放つ夜ト様に、驚きのあまり思わずぽかんとする。小福ちゃんが腰に手をあてて夜ト様を指差した。
ああ、これはお怒りのポーズだ。

「女子のトークに男の子が割り込んできたら駄目なんだよ夜トちゃん！」
「はぁ、？！それだと大黒はどうなんだよ！」
「そういうの揚げ足って言うんだよ！Aちゃんとお話ししてただけだから出てって～！」
「泣いてる神器放っておけるかよ、！おい！大黒、お前んとこの神様どうにかしろ！」
「今回はお前の間が悪かったよ。諦めな夜ト。」

頬を膨らませてぷんぷんと怒る小福ちゃんに夜ト様が追い出される。

ちらりと大黒さんを見れば、優しく頭を撫でられた。

「(……ずっと、焦がれていた温もり。)」