【ノラガミ】妖少女は夢を見る (ページ17)

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踏み切りと妖ページ17

二人という犠牲を出した踏み切りは空気が重く暗い。息を吸うのも吐くのも苦しいくらいだ。

「こういう魂は魔に憑りつかれているから神器にもなれない。もう死んだやつも、まだ生きているやつも、救いようがないんだよ。」
「何てこと言うんですか……！」

ひよりさんは夜ト様と口論になっているようだが無理もない。私はどちらにもなれないが、どちらの痛みも知っている。
困ったように見守る雪音君の不安げな背中を小さく叩けば、驚いたようにこちらに振り返った。

「あんたいつも音たてずに近付いてくるのな。」
「えっ、ごめんね。」

歩き方なんか気にしたことなかった……とぼやけば、小さく笑った雪音君がぴたりと隣にくっついた。

「なあ、ひよりと夜トはどっちが悪いの？」
「…………きっとどっちも悪くないわ。」
「何だそれ。」

難しそうに眉を寄せた雪音君の頭をかき混ぜるように撫でる。

「雪音君にならきっと分かるよ。生きている人の考え方も、神器の考え方も。」
「意味わかんないし、髪の毛ぼさぼさになったんだけど、！」

そう、雪音君ならきっと辿り着ける。
人として生き、神器として生を受けた貴方なら。

一人で駆け出したひよりさんの背中を私は見送るだけだった。

「器を呼んだら来い、名を呼んだら戻れ。今はそれでいい。」

夜ト様が雪音君に言葉をかける。

妖のざわめきたつ気配、つられるように昂ってしまうこの穢れた体は、それを隠すように小さく震えた。