天神という男 ページ15
微かな足音に金色の瞳がぎらつく。
「(一人、三人……いや、もっとか……?)」
いつでも刀が抜けるように身構えて、私は未だに騒いでいる三人を横目に見た。……夜ト様がこの距離で気付かないわけがない。
そうか、そういえば此処は。
「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな」
巫女服の女性達に囲まれて気付いた。
この人は学門の神である菅原道真その人だ。
「(危なかった……刀を抜かなくてよかったわ……。)」
本物の神様だ!とはしゃいでいる、ひよりさんと雪音君に苦笑しながら私は夜ト様の隣に立つ。
「面倒なことになりそうだ……。」
「今は頼りになる雪音君もいますし、きっと大丈夫ですよ。」
ふと、夜ト様が耳元に口を寄せる。
「お前も頼りになるよ。」
呆然とした私に夜ト様が「何だその顔。」と可笑しそうにけらけらと笑って肩を叩く。
「……ありがとう、ございます。」
耳まで真っ赤になりながら振り絞る言葉に菅原道真もとい天神様が視線を寄越した。
「青春中にごめんねえ。実は君達にお願いがあるんだけど。」
にまにまと袖口で口元を隠しながら割り込んできた言葉に恥ずかしさで縮こまる。
「まだそんな人と一緒にいたのね!」
「?!、伴音ちゃん?!!」
突然後ろから伴音ちゃんに抱き締められてそのまま引き摺られる。パニックの連続で頭がくらくらしてきた……。
ああ、まだどきどきしている。
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まチョコ - 上手すぎやろ。喋り方までそっくり。面白いし感動した。 (2021年9月1日 18時) (レス) id: 310d4b66e7 (このIDを非表示/違反報告)
琉那(プロフ) - めっちゃ面白いです (2019年9月30日 21時) (レス) id: 60dcb24f8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜狐 | 作成日時:2019年8月24日 23時