【ノラガミ】妖少女は夢を見る (ページ13)

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路地裏の秘密ページ13

「おい雪音！こんなのはどうだ？可愛いぞ。」

カピバラのキャラクターの描かれた服を掲げて夜ト様が自信ありげに胸を張る。

「……だっさ。」

やはりお気に召さなかったようだ。
すっかり不貞腐れて、俺のにするからいいもん……、と唇を尖らせた夜ト様を尻目に、なるべく年頃の男の子として周りから浮かないように服を選んであげる。

「雪音君はとても綺麗な顔立ちだから、何を着ても似合うわ。」

柔らかな髪を撫でれば雪音君が驚いて飛び上がる。真っ先に、こちらを凝視した。
そう、この子は人の体温になれていないのか。
縮こまった背中を撫でて、そうっと、抱き締める。

「な、何するんだよ、あんた。」
「雪音君、ここは大丈夫よ。」
「おい夜ト、こいつ何とかしろ！」
「雪音だけずるいぞー。」

「ここに、貴方の怖いものは無いもの。」

金色の瞳が朝焼けの色と混ざって柔らかくなる。困ったように眉を寄せた雪音君が、意味わかんねぇ、と私を突き飛ばした。

この子は幼すぎるゆえに、脆くて弱い。

でも、優しい子だ。
この子ならきっと夜ト様の唯一無二になれる。

その為に、私に出来ることは……。

「A？」
「！はい、！何でしょう、夜ト様。」
「俺とはしてくんねーの？」
「……？？」
「だーかーらー、ほれ。」

腕を広げた夜ト様に背筋が伸びた。
心音がうるさい。
顔が熱い。
……恐る恐る抱き締めた体は、冷えている。

「……Aは体温が高いな。」
「そうですか？」

いつもこんなに冷たい体で戦い続けていたのか。

どきどきした高揚感は消え失せてしまい、後に残ったのは、夜ト様の冷たい熱の名残だけだった。

「俺は何を見せられてんだよ。」
「雪音だけ特別扱いなんざ100年早いからな！」

己を焼き尽くしかねない、この燻り続ける炎の灯りを分け与えることが出来たなら。