6クール ページ7
Aside
気がついたら勝手に体が動いていた。
寺「何だ……ひっ！」
僕の顔を見た寺坂が小さく悲鳴をあげる。
情けない。
寺坂を下ろすと彼は腰が抜けたのか、ぺたりと座り込んだ。
こっちは20cmくらい差があるお前を持ち上げて息ひとつあげてないのに。
女々しい奴。
私は対先生ナイフを持つ手を寺坂の首筋に、もう一つの手は二人の首筋に当てる。
A「……人を使ってしか攻撃できないの？
だから落ちこぼれなんだよ。
自分自身でかかってこいよ。｣
自分でも驚くくらい低い声が出た。
誰が脅したとか、作戦を立てたとか、どうでもよかった。
今この教室で、たった一人の友人を傷つけられたことが、どうしても許せなかったのだ。
殺「春夏冬さん、やめておきなさい。
そこで害を加えては、あなたも加害者になります。
ここから先は先生の時間です」
上で張り付いていた先生の声が私の行動を止める。
振り上げていた僕の拳は柔らかな触手でしっかりと受け止めていた。
振り払おうとするが、異常に気づき動きを止める。
先生がとても真っ黒な顔をしていたのだ。
見たことも無い、純黒。
今の先生に逆らったら、やばい。
それだけは感じ取れた。
A「……わかった」
僕はおとなしく引き下がり、渚の方へ向かう。
殺「実は先生月に一度ほど、脱皮をします。
脱いだ皮を爆弾にかぶせて、威力を殺した。
つまりは、月イチで使える奥の手です」
よく見ると渚は怪我をしていなかった。
月イチの手とやらで先生が守ってくれたようだ。
渚｢あはは……｣
A｢あははじゃないっつうの……びっくりするだろ｣
僕の早とちりか…怪我がなくてよかった…。
安堵するのもつかの間、怒気がこもったテノールが3人の名を呼ぶ。
殺「寺坂、吉田、村松首謀者は君等だな」
寺「えっ、いっいや、渚が勝手に」
彼らが言い訳を終える前に、先生は姿を消す。
三秒も経たぬ間に、教卓へと戻ってきた。
手にしていたのは表札。
磯貝、矢田、三村……E組生徒のものだ。
なんとみんなの家の表札を持ってきたようである。
椚ヶ丘はそこそこの名門校、他県から通う生徒も少なくない。
それをこんな短時間で、全てもってくるなんて。
……僕らにこんなスピードモンスターが殺せるのだろうか。
そんなこれからへの不安が頭をよぎった。
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作者名：月影 | 作成日時：2015年8月6日 19時
