2クール ページ3
Aside
ペタン、ペタンと足音を鳴らして黄色いタコのような生物が教卓の前に立つ。
殺「HRを始めます 日直の人は号令を！」
渚「……き、起立っ！！」
友人の号令が響く。
渚「気をつけ！！」
僕達は、殺し屋。
渚「れーーーーーーーい！！」
生徒全員の銃声が鳴り響く。
当たるはずのない恒例の発砲タイムだ。
まだこのクラスになってから日は経ってないのだけど、それだけは分かっていた。
殺「おはようございます」
名前のないモンスターが弾を避け続ける。
殺「発砲したままで結構ですので出欠を取ります
春夏冬さん」
僕はけだるげに返事を返す。
A「はい｣
殺「すいませんが銃声の中なのでもっと大きい声で」
それなら発砲しなければいいのに。
A「はい。｣
めんどくさい。
殺「磯貝くん」
磯「……は、はい！！」
殺「岡野さん」
岡「はい！！」
殺「遅刻なし……と素晴らしい！
先生とても嬉しいです」
標的は先生。
一向に当たる気配のないこの一斉射撃に、僕は呆れつつあった。
確かに銃(さすがにエアガンであるが)を日常的に扱うなんて今まで無かったし、上手くいかないのはわかる。
でも、ちゃんと銃口の向きとか考えないと当たらない。
タコもそう言ってる
A「こんなんじゃマッハ20なんて殺せるわけないな｣
殺「最高時速マッハ20の先生は殺せませんよ」
小さく零したその言葉は、怪物の先生と重なった。
嫌々しく顔を逸らす。
前「春夏冬もそうは言うけどよ……本当に避けてんのかよ先生！！」
「そうだそうだ！」
前「当たってんのに我慢してんじゃねーの！？」
不毛なことが始まる予感がしてヘッドフォンを付けた。
どうせ、実演とでも言って自分の腕を切り落とすのだろう。
予想通り、ヘッドフォン越しに、ビチビチと音が聞こえる。
少し顔を上げるとタコが自分の触手を切っているのが見えた。
魚が跳ねるようにそれは生きているようで、気持ちが悪い。
殺「殺せるといいですねぇ…卒業までに。｣
ぬるふふふ…と笑い声が聞こえてきた。
どうやら一日の諸連絡は終わった様である。
彼はいつもホームルームの最後に笑う。
殺「銃と弾を片付けましょう、授業を始めます」
けだるげな１日が始まる。
今日も始業のベルが鳴った。
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作者名：月影 | 作成日時：2015年8月6日 19時
