日常3。 ページ4
つらつらと言葉を吐き出す太宰、聞き入る織田作。
それを他所に私はグイッとグラスを持ち上げる。
太宰の仕事の話、増えた傷の話、そしてよく分からないが堅いお豆腐のなど。
話がコロコロと展開していく。
「その豆腐は美味いのか」
織田作が興味深そうに問うと、太宰は肯定の素振りを見せた。
「今度食べさせてくれ」
そう感心した。
どうしてこの男はこうも突っ込むのが苦手なのか…。
「織田作さん、今のそれ、突っ込む所ですよ」
私の気持ちを代弁してくれた者がいた事に驚く。
入口の方を見ると、学者風の青年が階段を降りてくるところだった。
坂口安吾、ポートマフィアの専属情報員だ。
「やあ安吾!暫く見なかったけど、元気そうじゃあないか」
太宰が笑顔で手を掲げる。
「元気なものですか。東京出張からたった今帰ってきたばかりなんです」
くたくただ、と首を回しながら太宰の隣に腰掛けた。
それとほぼ同時に、マスターは安吾がいつも頼んでいる物をスっと置いた。
準備の良い人だ、全く。
私も遊びに行きたい〜など太宰がほざくと、安吾は鋭い視線を向ける。
「勿論仕事です」
安吾の話によると、どうやら魚釣り__というのはマフィアの隠語で、密輸商品の買い付けに当たっていたそうだ。
しかし釣果はゼロ。無駄足だったようだ。
「ただ、悪くない骨董時計が一つありました」
買い手がありそうだ、と、鞄から紙包みに覆われた筺をわずかに見せた。
その上に、煙草や携帯雨傘などの出張道具が載っていた。
「…取引は何時に終わったの?」
太宰が荷物を見ながらふと訊ねた。
「夜の八時です。遊ぶ暇もなくとんぼ返りですよ」
安吾は苦笑した。
「まあ、給料分は働きました。これで僕も頸を切られずに済みそうだ」
「随分と気弱だね、“マフィアの凡てを識る男”坂口安吾ともあろうものが」
マフィア所属の情報員である安吾は、他組織と秘密情報をやりとりする情報の運び屋だ。
重要で機密性の高い情報を運ぶ。謂わば闇の密使だ。
組織の趨勢を決める重要情報は、ほとんどが安吾を介して首領の元へ届く。
生半可な人間ではその大役を任せられない。
安吾を拷問して情報を吐かせれば、黄金よりも貴重なマフィアの情報が手に入るのだから。
縒った鉄線のようなタフさが必要だ。
坂口安吾___。
丸眼鏡に背広という学者然とした出で立ちだが、これでも我々と同業。
インテリで、ミステリアスな男だ。
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こたく(プロフ) - 坂竹会長さん» あわわ…気づいて頂けて凄く嬉しいです…!太宰治と志賀直哉は仲が良いとはどうも言い難い関係ですもんね…。私自身この小説を書くにあたって色々調べたりしたので更に文豪に詳しくなれました!(^^*)コメントありがとうございました<(_ _)> (2020年4月22日 22時) (レス) id: 3d133b905d (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - 夢主ちゃんのお借りしている文豪さんって志賀直哉さんだったのですね…!!((今更感 いろいろと詳しく調べてみたのですが太宰さんと夢主ちゃんとの相性具合が現実と少し似ている部分があって更に面白く読めました!体調お気をつけてくださいね。 失礼しました( ̄^ ̄゜) (2020年4月20日 14時) (レス) id: 49f17fb925 (このIDを非表示/違反報告)
こたく(プロフ) - ★ayaka★さん» 嬉しいです!そう言って貰えるのはすごく励みになります( ; ; ) (2020年1月12日 23時) (レス) id: 3d133b905d (このIDを非表示/違反報告)
★ayaka★(プロフ) - 面白かったです。続き待ってます (2019年10月21日 22時) (レス) id: 65fd904e63 (このIDを非表示/違反報告)
こたく(プロフ) - アイリスさん» あわわ…応援のお言葉、非常にありがたいです。ありがとうございます…!がんばります!! (2019年10月14日 17時) (レス) id: 3d133b905d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたく | 作成日時:2019年6月24日 22時