世界一仲の悪いカップルの日常【文スト】

日常46。 ページ47

「失礼致します。与謝野女医(せんせい)、これ頼まれてた資料のコピーです。

…あの、お二人は何をなさっているんですの？」


『ナ、ナオミ…！？』



男じゃなくて良かった、と少し安堵。

それもそうか。きっと与謝野さんはナオミだと云う事を分かって部屋に通したのだろう。


「Aさん、何処かお怪我でもされたんです？
大丈夫ですか？」


コツコツと私に歩み寄ってくる。


『え、や、えっと、』


焦る私の前に少し心配した様子で回り込んできた。


が、その大量の赤い点々を見るなり、表情が固まる。



「っ、それって…」


『あの、これはだな、その…』



口籠る私を見て、与謝野さんが一つ溜息をついた。



「太宰の野郎だよ。ほんっとやってくれるねェ」


其れを聞き、納得するように頷く。

「成る程。其れで消す方法を求めてAさんは与謝野女医に尋ねてきたって事でしょうか」



『はは、鋭いな。話が早くて助かる』

矢張りナオミは此の手の話には強いのだろうか。

一体何処からその知識を仕入れてくるのか…。


「消す方法でしたら、確か温めると良いんですよね、与謝野女医？」


『温める？』

「そうさ。要するに血流を良くすりゃ消える。」


彼女が澄ました顔で云う。



『与謝野さん貴方…、何故それを一番に教えて下さらなかったのですか。』


目を細めて問うと、さあ、とシラを切られる。

全然解体する意味ねぇじゃねえか…。



兎に角、消す方法は判った。
では次、早急に実行を…。


『てか与謝野さん、そろそろ釦を閉めて下さいます？』


おや、と釦に掛けたままの手を見ると、楽しそうに、すまないねぇと笑った。



すると後方からコンコン、とノックが響く。


誰だ？、そう思ったのも束の間。



「与謝野さん、Aまだ居る？」

『えっ…』


1番会いたくない彼奴の声が扉越しに聞こえる。


『っやっべェ！与謝野さん、早く釦、』

「あ、A居るんだね」


しまった、声でバレてしまった！！！(馬鹿)


「入るね」


『え、いや、待って、』


扉がゆっくりと開く。



『ちょ、待っ、うああああああぁぁぁ！！！』



･



･



『…居ないじゃん』



扉を開けるとがそこにAの姿は無く、手を中に浮かせた与謝野さんとナオミちゃんのみが居た。



『ちぇ、逃げられたか…。』



あからさまに避けてるんじゃないよ、あのチビゴリラ。





私は麗しい女性二人の冷やかな視線を背に、医務室を後にした。

日常47。→←日常45。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す