世界一仲の悪いカップルの日常【文スト】

日常42。 ページ43

時刻八時過ぎ。

探偵社のドアを潜る。



『はァ…、』



非常に憂鬱だ。気が乗らない。
何より彼奴の顔を見たくない。

だが此処で私が意識してしまえば奴の嫌がらせは最高になる。

それだけは許せない。



「おい、なんだその気の抜けた溜息は。

挨拶が聞こえんのだが？」



国木田がパソコンを操作しながら此方に喋りかけてくる。


面倒臭ェ。



『はよ〜、国木田ァ』



そうふざけた返事を返す。



「おいA、挨拶というのはああでこうでくどくどくどくど…」



よし、仕事すっか。(無心)



国木田がなんか喋り続けているがそんなのは無視して自分の机に座る。


今日は主に書類整理。

パソコンカタカタやっときゃ終わるな。



「あ、Aさんおはようございます」


ひょこっと私の顔を覗き込む。

笑顔である。



「昨日楽しかったですね、また行きましょう！」



嗚呼、私の癒し。



「ところで、髪を束ねてらっしゃらないの珍しいですね」



『エッ…』



そう。何時もは横で一つに束ねている髪を今日は下ろしてきている。


それは何故か。

決まっているだろう。



「なんだかとっても新鮮です！」


『エ、ア、うん、ありがトウ…』



言えない。

大人の事情で下ろしてきているなんて、こんな純粋な笑顔に向かって言えたもんじゃない。



「Aさん、どうかされました…？」




そう敦が云うと同時に社のドアが開く。

乱歩さんだ。



「ふあぁ〜、眠い。」


「おはようございます乱歩さん！」


乱歩さんは口の中の棒付き飴をコロコロ転がしながら笑った。



「やぁ敦。……A。」


笑顔は消え、私をじっと見つめる。



『な、なんでしょう…？』



じーっと見つめた後。



「……風でも吹いたら如何するつもり？」





…まずい。





『ヒェ、あ、えと…、』



「風？」



敦がコテンと首を傾げる。



「だってAちょっとでも髪が動いたら見え

『あああああああああああああ！！！！』





彼の言葉を全力で遮り、何とか誤魔化す。


『ええええとえと乱歩さん、その、アレですよね！ほら、昨日尖ったゼリーが飛んできてそれの怪我が見えちゃいそうなんですよねあははお恥ずかしい…』


「えええ！？大丈夫ですか！？」



よし、何とか敦は信じてる。


いや尖ったゼリーってなんだよ。





「ま、僕には関係ないけどね〜」



そう云って社長室へ入っていった。





今日一日、如何乗り切ろうか。

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