世界一仲の悪いカップルの日常【文スト】

日常20。 ページ21

太宰「何も…そんな本気で殴ることないじゃないか…」


『うっせェ！』


腹部を抑え、悶えている太宰を横目に園内を歩く。



園内は非常に賑わっていて、とても人が多い。

多くの人が、まるで現実を忘れたかのように休日を、そして遊園地を楽しんでいた。




谷崎「さて、はじめは何からにします？」



与謝野「そうだねェ、あれから行こうじゃないか」



そう云って与謝野さんが指さしたのは＿＿＿





『お化け屋敷？』





それは古風な屋敷になっていて、何とも言えない不気味な雰囲気を漂わせていた。

近くに貼ってあったチラシによると、ここのお化け屋敷はかなり怖いことで有名らしい。



『え、一発目からお化け屋敷？』


敦「ぼ、僕はお化け屋敷賛成です！」


敦が早口で云う。



『お前、怖い系いけたっけか？ 自ら賛成だなんて…」




国木田「俺も賛成だな」



『は？ 国木田…？』



『いやいや、お前こそ怖い系絶対無理じゃねェか、オイこら目ェ逸らすなこっち向け』



それから次々と賛成の意を露わにする社員たち。


何かがおかしい、気がした。




『なァ、どうして全員あれに入りたががるんだ？』

お化け屋敷の方を指差す。


谷崎「えーッとまあそれは…はは…」


鏡花「…気分？」



『気分…？じゃねェよ、まぁ鏡花はあんまり怖がりそうなタイプじゃねェしな…

問題は…あの三人だな、だから何故目を逸らす』



言わずもがな、敦、国木田、谷崎の三人だ。





太宰「まあ良いんじゃない？」


さっきまで黙って話を聞いていた太宰がやっと口を開いた。



太宰「みんな行きたいって云ってるんだしさ、別に良いでしょ？」



『まあ、それはそうだが…』


ただ、どうしても引っかかる。コイツらの態度。

あまりにも不自然じゃないか？


否、私の考え過ぎなのだろうか。




太宰「それともA…



怖いの？」




太宰がニヤニヤしながら云う。


『は？ いや、別に怖かねェけど…』



敦「それでは、二人一組で行きましょう！

じゃあ太宰さん、Aさん、行ってらっしゃ〜い！」


『え、は？』


無理やり入口の方へ押しやられる。



係員「二名さま、ご来館でーす！」




『はは…マジかよ…』








もっと私が、自分の意思に従順であれば。




のちに、私は後悔する事となる。


この遊園地というイベントの、本当の目的を。

私はまだ知らずにいた。

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