【HQ】烏に紛れている鷹 part9【烏野】

＊380話「半端」 ページ21

これまで何度か向けられた鋭い目。

“孝先輩”といるときだけ(・・)向けられた目。

その目に射抜かれて体を凍らせながら、
何かがストンと、心に落ちた。


なんで今までもその目を向けられたのか。
なんで孝先輩が絡むと怖かったのか。

今になってわかる。


ニノさんは……。


「私ね、菅原が“好き”なの」


頭に浮かんだその二文字。
最近考えてばかりいるニ文字。

さらりと言い放ったニノさんに目を丸くする。


孝先輩が好きなのに驚いたんじゃなく、
その二文字をさらりと“言えること”に驚いた。


だってその二文字は
たったニ文字にも関わらず、
とてもとても重い意味を含んでいるから。

言葉自体は端的で単純なのに、
その言葉を口に出すのにはとても勇気がいる。


ニノさんは私の様子に
穏やかじゃない光を灯しながら目を細めた。


「菅原が幸せならいっかなって思ってたんだよ。
だって菅原の目には“A”しか映ってないんだもの。
入る隙なんてないんだろうなって思っちゃったから」


彼女の口から紡がれる言葉に冷や汗が流れる。


「でも、Aがそんなんならやめる。諦めない。
菅原を“大切にしない”のなら譲らない。
もともとそんな半端な思いじゃないの。“A”と違って」


グサリ、グサリ、と言葉の刃物が刺さっていく。

ニノさんはゆっくり離れて、ドアの方へいって振り返った。


「部活、受験。この2つを両立するだけでも大変。
でも、それは菅原が選んだ道」

「“A”に告白したのだって半端な思いじゃないの」

「それを無碍にしたあんたを私は許さない」


冷たい、冷たい目。

それだけ言って閉じられたドアから、
彼女の、ニノさんの思いの強さを目の当たりにした。



私は……。


「どうすればいいのかな……？」


誰か教えてっ。

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