【HQ】烏に紛れている鷹 part9【烏野】

＊379話「それとこれとは別」新見side ページ20

正直、菅原が幸せそうならいっかなって思ったこともあった。

だって、菅原にはAしか見えてない。
私の入り込める隙なんてない。

それなら、仲の良い女友達で終わってもいいかなって思っていたんだよ。



“これまで”は。





•




菅原に会ったのは偶然。
何の拍子で告白の話を知ったのも、きっかけは忘れた。

他愛のない話から気づけば、そんな話になってた。

たぶん菅原も話すつもりなんてなかったのだと思う。
けど、私にもらすくらい精神的にきてたのだとも思う。


「振られたんだあ、俺」

「……」


そう話す菅原は辛そうで、見てられなかった。

やっと巡ってきたチャンス。

だなんて、思えなかった。


まあ、そのあとに聞いた“話”もあるけど。


だから、部活も大変なんだろうなあって思ってた。

だって告白した時点で、二人の関係は
“今までどおり”になんてならないから。

ギクシャクしてんだろうなって思ってた。


けど、体育館にいったら全然だった。
ギクシャクはしてたけど、気まずいとかそんなんじゃない。

“あれ”はそんなんじゃない。


Aは自分の気持ちに“気づいてない”と思っていた。

自分がなんで赤くなるのか。
なんで菅原にだけ動揺するのか。
なんで他と同じようにできないのか。

わかっていなかった“はず”だった。


でも、もうそれは“過去”のことでしょ。

わかってるんでしょ、なんで赤くなるのか。
わかってるんでしょ、なんで動揺するのか。
わかってるんでしょ、自分の気持ちを。


名残惜しそうに振り返る姿。
ほの赤く染まった頬。
雄弁に語る瞳。


“好き”だといってる顔に、腹がたった。


振ったんじゃないの？

拒んだんじゃないの？


なのに、なんでそんな顔してるの？


今までは気づいてないから、何も言わなかった。
今まではわかってなかったから、何も言わなかった。


でも、

でもさ、

そんな態度なら“許さない”。


譲ってなんかやらない。


絶対、絶対に、許さない。

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