【HQ】烏に紛れている鷹 part9【烏野】

＊374話「敵わない」月島side ページ15

「顔あげてください」


素直にあげる彼女。

憐れるでもなく、辛そうでもなく、
どこまでも真っ直ぐな真剣な瞳。


あー、この人は“覚悟”したんだ。

僕を振るという覚悟。
僕を傷付けるという覚悟。

そんなのしなくていいのに。

そもそも答えなんて別にほしいわけじゃなかったのに。


「……有耶無耶にしてくれてよかったのに」

「それはできない」


思わず漏れた心の声に、
即答で否定が入った。

驚いて目を見開くと、彼女は相変わらず真っ直ぐな目で話す。


「私、本当に今回蛍君に助けられたの。
一番崩れそうで、壊れそうだったとき支えてもらったの。
君の言葉と行動に救われたの」

「蛍君は言ってほしくなかったかもしれない。
けど、私は有耶無耶なんかにしたくない。
そんな失礼な態度を君に取りたくなんかない」

「蛍君と同じ気持ちを返すことはできない。
けど、それでも君は私にとって大切な人であることは変わらない。
だから、真剣にちゃんと答えたかったの」


いつになく饒舌に語られた。

これが他の人なら、
そんなのあなたの自己満足でしょって言い返す。

けど、惚れた欲目なのかな。


真剣に考えてくれたことが嬉しい。

大切だといってくれたことが嬉しい。

支えに、助けになっていたのが嬉しい。


ちゃんとあなたの中に僕は跡を残せたのだと。

そう思える。

そう思えるだけで、“笑み”を浮かべられる。



まだ真っ直ぐに見てくる彼女に、
敵わないなあと思いながら笑った。


「Aさん」

「はい」

「好きです」


これが最後。

もう伝えはしない。
あなたへの気持ち。


笑っていえば、Aさんは一回目を伏せて言った。


「ありがとう」

「でも、」

「ごめんなさい」


ストンと落ちた言葉。

けど、思ったより傷ついてない。


最後にちゃんと告白できてよかったです。


でも、しばらくはまだ“好き”でいさせてください。

＊375話「きゅっ」→←＊373話「わかっていた」月島side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す